シアトルサイダーとトゥービアーズ、フランス企業とパートナーシップ提携

こんな情報が入ってきました。シアトルサイダーとトゥービアーズがフランス企業とパートナーシップ提携をするそうです。創業者であるジョエル氏自ら記事を寄せています。全文はこちらをご覧ください。 Dear Two Beers Brewing and Seattle Cider Company supporters

提携するのはフランス企業Agrial。打診があった当初は躊躇していたが、話をしていくうちに理解し合えたのだそうです。端的にこう示してあります。

They believed in everything we believed in. They understood our desire to grow Two Beers Brewing Co. and Seattle Cider Co. without changing any of the good we were doing.
我々が信じるものを彼らも信じています。続けてきた良い部分は一切変えずにtwo beers社とseattle cider社を育て伸ばしていくという望みをちゃんと理解してくれました。

実際は株式をそれぞれが持ち合う形となります。雇用している社員も、ディストリビューターも変わることはないとのこと。お互いを伸ばしていく素敵な提携となってくれると嬉しいですね。

 

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さて、ここまではよくある買収・提携の話です。一点私が強調したいのは”sell out”(ここでの意味は「金儲け主義の事業売却」のこと)について触れていたことです。現代クラフトビールシーンの一端をよく示していると思います。

We have all read articles about local breweries being purchased by a large brewery in Colorado or Saint Louis. We have also read articles about venture capital firms purchasing breweries in hopes of making a quick dollar and reselling them. None of us want this.
コロラドやセントルイスにある大きなビール会社がローカルブルワリーを買収したという記事を全部読みました。また、すぐに転売して稼いでやろうとする投資会社による買収の記事にも目を通しました。我々が望んでいるのはこういうことではありません。

寂しい部分もあるけれど、クラフトビールはニューアメリカンドリームという投稿を以前しました。関連する部分を引用します。

ビールは高いものではありませんから、一定以上のボリュームが出ないと儲かりません。また、ビール事業は設備産業であるという面も否定できず、設備投資をしないと大量生産出来ません。とはいえ、雇われている間は給料も多くはない。うーん、なかなか厳しい。

となると、初期投資をがっつり行ってブランディングにも成功し、知名度・評判の高まった会社は「更なる投資」を進めて販売を伸ばすか、「会社の売却」を考えるでしょう。オーナーとしては会社売却の利益をたっぷりもらって勇退するのも一つの手かもしれません。資本主義的側面から見ればその選択は合理的で大成功です。クラフトビールが流行し一つの産業として確固たる地位を築き始めたからこそ、ビジネスとしての側面もしっかり考えねばならないのです。売却に成功すれば「ニューアメリカンドリーム」なのは間違いない。なんだか、こう、ちょっと寂しい気もするけれど。

クラフトビールを作ること、売ることは単に資本主義的な行為なのでしょうか?もちろん資本主義的側面がゼロではありません。しかし、それ以上の何かであるからこそ心に深く刺さるものがあるのだろうと私は思います。「クラフトとは何か?」を考えさせられますが、時代は止まってくれません。走りながら考え、そして行動していくしかないのでしょう。クラフトビールはクロスオーバーでありながら、そしてリアルです。