統計には現れないものたち

2週間ほど前のことです。毎年恒例のランキングが発表されました。Brewers AssociationのTOP 50 BREWING COMPANIESです。

BREWERS ASSOCIATION RELEASES 2018 TOP 50 BREWING COMPANIES BY SALES VOLUME

こちらは販売量をベースにしたもので、毎回リリースされるたびに熟読します。「現在アメリカの主流はどこなのか?」とか「クラフト大手の動向は?」など気になっていることが多いので大変参考になります。概要を把握するのに有用ではあるのですが、ここ数年、いや、特にこの一年は「うーん、もうこれじゃ足りなさ過ぎるよなぁ・・・」と痛感するようになりました。

たとえば、過去5年間のデータを並べてみましょう。

TOP 50 BREWERIES OF 2014
TOP 50 BREWERIES OF 2015
TOP 50 BREWERIES OF 2016
2017 TOP 50 BREWING COMPANIES BY SALES VOLUME
2018 TOP 50 BREWING COMPANIES BY SALES VOLUME

ABInbevをはじめとする大手の買収によってBAの視点では”Craft Brewer”ではなくなったところがたくさんあります。たとえばLagunitasやBallast Point、Anchorもそうで、ランキング上位だったところがここ5年間で幾つも抜けています。親会社が変わっただけであって、そのビールが不味くなったわけでも廃番になったわけでもない。今も変わらず醸造し、同じ名前のビールを販売しているのですが、BAの言うところの”Craft Brewer”ではないから統計サンプルから除外されています。

BAの定義に当てはまるものだけでいいんじゃないの?

そういうご意見もあるでしょう。ごもっともです。それはそれで筋が通っています。

しかし、です。

今日を以て買収されましたので、明日からCraft Brewerでは無くなります。そういうことなので、よろしく

と言われて、ファンは納得出来るのか?という疑問も残るわけなのです。「BAの、BAによる定義を以て作成したランキング」に異を唱えるつもりは全くありませんが、統計には現れないものたちが既にかなりの数に上っており、もう現象として全体を把握するには難しい局面に来てしまったのかもしれないなぁとも感じます。それだけ人々の想いが複雑になってきている証拠なのでしょう。

現状は複雑で、それをフラットな目線で俯瞰しようとするとなかなか難しい。どういう切り口・条件を設定し、クラフトビールという名の現象を再構成して把握できるものにするのか?という問題が今目の前にあるように思えてなりません。もちろんこれはアメリカだけでなく日本も同様で、仮にカタカナのクラフトビールを定義するであればそれは何のためであるのか?という視点が無ければならないとCRAFT DRINKSは考えます。