第4回読書会の振り返りと次回開催について

日曜日に第4回クラフトビール文献読書会を開催しました。前回同様、試験的に3部制とし、2時間の枠を3つ設け議論するという長丁場でしたが、楽しい時間を過ごすことが出来ました。ご参加くださいました皆様、ありがとうございました。深くお礼申し上げます。

そこでの議論について少しご紹介しておきましょう。

第1部は私が勝手にしゃべるだけのものです。「ビールと公共性、コミュニティ」というテーマでお話をしました。ビール醸造が法律で禁止されている日本ではアマチュアが存在し得ず、その結果「作って売る側」と「消費する側」が分離していると私は考えています。これは拙著お金で買えるビール 買えないビールでも指摘したことですが、今回はもう一歩進んで、金銭的授受が行われないコミュニティ(正確に言えばファンダムになるとは思います)において自発的且つ互助的で、その上公共益を生むような活動は出来ないかという提案をしました。具体的な内容については今後発表する読書会活動報告にて記しますのでご興味ある方は是非ご覧ください。

第2部ではNational Museum of American HistoryのアーカイブからProhibition was fantastic for American beer, or, cheers to homebrewersを取り上げて読みました。決して詳細とは言えませんが、ここ100年強のアメリカのビール事情が端的にまとめられていると思います。禁酒法から今に続く流れを皆さんと眺めてみましたが、成り立ちにおいては日本とかなり違うことが明確になりました。皆さんと一緒に読んで良かったなぁ、これは。

第3部では飯塚先生らによる「東京大都市圏におけるクラフトビールイベントの展開と若者観光」という論文を読んだ上で議論しました。ビール祭りが毎週どこかで開催される時期になりましたから、今一度クラフトビールとイベントの関係やその意義、日常との接点などについて考えてみたいと思ったのです。会では①今まで参加して良かったイベントを挙げてもらい、②自身の経験から、行きたくなるイベントとそうでないイベントの違い、加えてイベントを経験することで得られたことを発表し、③理想的なクラフトビールイベントはどのようなものかについて案を発表して頂きました。

理想のビール祭りには様々な要素があると考えられますが、今回一番議論になったのは理想形をイメージするのに付随して浮かび上がった「ハレとしてのビール祭りをケの日常に接続する方法」です。質の高い体験をしてもそれが抽象名詞としての【クラフトビール】のままであれば、それは具体的な日々の生活に降りて来ない。クラフトビールのある生活へと繋がる導線を私たちはどう作り出せば良いのかについて考えることが出来たのはとても有意義でした。

ちなみに、この論点にご興味ある方は拙著「文脈とビール3」に収録されている「せっかくだから」の遠さ駅と家の間にもご覧頂けたらと思います。

さて、次回のご案内です。来月も読書会を開催予定で、これまで通り無料です。どなたもご参加頂けます。第5回は8月25日に行いますが、そのやり方は第4回までと少々変更があります。以下ご確認くださいませ。

3部制で各回参加自由です

12時〜、14時〜、16時〜の3部制で、それぞれ内容が異なります。第5回は試験的にこういう形で行うこととします。

第1部は「ビブリオバトルっぽい」の会です

今回はこれまでと打って変わってビブリオバトルっぽいことをやってみようと思います。ビブリオバトルは書評合戦と言えば良いでしょうか、読んで面白いと思った本を持ち寄ってその素晴らしさをプレゼンするものです。

何故これをしようと思ったかと言うと、参加者の皆さんの興味関心が多岐に渡っているのでどういうアプローチで議論・検討していくのが良いのか悩んでいたからです。クラフトビールという現象は様々な角度から検討することが可能であり、参加して頂く皆さんがどういったアプローチで考えているかを本という形で共有すると以後の議論に役立つと思ったのでした。

自分がどう考えているかを本を起点に改めて整理してみるのも良いですし、それを発表することで他の参加者の方も「あー、なるほどね、そういう考え方でも捉えられるのか。ふむふむ」となったら素敵ですよね。自分の考え方がアップデートされてより深く考えられるようになるかもしれません。

ということで、一度やってみようと思います。

第1部に参加される方はクラフトビールを考える上で役に立った本を1冊以上持参し、その本がどういう風に役立ったかをプレゼンしてください。「クラフトビールを考えるのに役立った本」であって、クラフトビールそのものに関する本でなくても構いません。小説、評論、デザイン集などジャンルは問いませんので推しの一冊を紹介してください。

なお、ビブリオバトル公式ルールではこのようになっていますが、この会では特にチャンプ本は決めません。また、ホワイトボードも使用可、作成した資料の配布も可とします。大事なのは伝えること、伝わることなので口頭での説明だけに制限しないこととします。

1 発表参加者が読んで面白いと思った本を持って集まる.
2 順番に1人5分間で本を紹介する.
3 それぞれの発表の後に,参加者全員でその発表に関するディスカッションを2〜3分間行う.
4 全ての発表が終了した後に,「どの本が一番読みたくなったか?」を基準とした投票を参加者全員が1人1票で行い,最多票を集めた本をチャンプ本とする.

私は何を持っていこうかなぁ・・・たくさんあり過ぎて困ってしまいますが、そうやって悩むのもまた一興。

ちなみに、参加者が少なかったら余った時間で何かお話しようかと。「国産ホップにまつわるアレコレ」とか「”美味しいは人それぞれだから”に対する反論の試論」など、何かしらネタは仕込んでおこうと思います。

 

第2部は「事前に読まずにその場で読んで議論をする」会です

初回同様、主催者が用意した短めの文章をその場で読み、発表・議論をします。クラフトビール文献読書会とは(詳細版)で示した通り、うまく考えをまとめられなかったら一旦パスしてしても構いません。他の方の意見を聞いてから後で必ず発表してください。

前回はクラフトビールを含むアメリカの近代ビール史に関する文章を取り上げましたが、今回はヨーロッパのクラフトビールに関する文章を読もうと思います。今回も外国語の文章なのですが、主催者が邦訳したものを用意しますのでご安心ください。アメリカ発祥のカルチャーという認識が変わるかもしれません。クラフトという言葉に含意され、無意識に前提としているところを意識できるともっと面白くなってくれるはずです。

第3部は「事前に読んで発表し、議論をする」会です

事前に指定された文章を読み、そこから読み取れたこと、読んで考えたことを発表して頂きます。その後、挙がった論点について更に議論して参ります。第5回読書会は「クラフトブルワリーの課題」をテーマにします。指定図書はcraftdrinks.jpにて御本人に許可を得て翻訳した、De Dochter van de Korenaar(ドクトルヴァンドゥコールナール醸造所)のRonald Mengerink氏が12月2日にfacebookに投稿した文章です。ここには現代クラフトビールが国を問わず問題になっている事柄が多数挙げられていて、非常に示唆的な内容です。ここ日本でも同様のことが予見され、マイクロブルワリー全てに共通する課題になるであろうと思われます。これを元に議論することは発表から5年経った今でも意義深いと考えています。

ということで、第3部では上記文章を読み、①論じられている問題点を最低5つ列挙してください。次に、②それぞれ何が原因であり、それをどう解決したら良いかを発表してください。正解があるわけではないので、ご自身の認識と思考のプロセスをお伝え頂けたらと思います。

ということで、こんな感じで第5回を行います。お申し込みはクラフトビール文献読書会参加申し込みフォームからどうぞ。会のルールや申込み方法はnoteにまとめてあるのでそちらをご確認ください。皆様のご参加、心よりお待ち申し上げております。