CRAFT DRINKS的 “Beer of the year” 2017⑤ 番外編
CRAFT DRINKSでは不定期ではありますが、その時々のお勉強を備忘録的に写真を交えてご紹介して参りました。Instagramのアカウントに勉強の記録を残していますので、宜しければご覧ください。→@craft_drinks
そんな楽しい勉強(笑)の中、2017年に飲んで非常に質の高かったビール、印象に残っているビールを幾つかの部門に分けて”Beer of the year” として挙げていきたいと思います。前回までのものを以下に挙げておきますので、お目通しくださいませ。
CRAFT DRINKS的 “Beer of the year” 2017①
CRAFT DRINKS的 “Beer of the year” 2017②サワーエール編
CRAFT DRINKS的 “Beer of the year” 2017③IPA編
CRAFT DRINKS的 “Beer of the year” 2017④ フルーツ編
さて、番外編の今日は「分類に困ったビール」についてです。
Brouwerij Emelisse Roos Boos Schwartz IPA
こちらのビールはオランダ・アムステダムでビアパブを展開するMOREBEERで手に入れました。小児がん患者のサポートを行っているKikaという団体へのチャリティビールとして限定で発売されたもので、ビール自体はオランダのBrouwerij Emelisseが醸造したものです。instagramのコメントにはBlack IPAと書きましたが、正直なところ何と表現したら良いのか悩みます。非常に難しい・・・
というのも、こちらは”Black IPA”ではなくて”Schwarz IPA”なのです。ここがミソ。たとえば、ratebeerだとこのビールはドイツスタイルのシュバルツに分類されています。モルティで確かにそれらしさがあります。しかし、ホップにはシムコーやモザイクががっつり使われていて、IBUも70。シュバルツとしては通常有り得ない強い苦味があります。モルトの風味がやたらに強いBlack IPAのような感じもするのです。どちらのスタイルのニュアンスも感じますが、片方だけに完全に一致もしない。どこか曖昧な、ふわふわとした不思議な感覚。そのくせ、抜群に美味しいのだから本当に困ります。
欧州のエスプリとでも表現したら良いのでしょうか、絶妙なバランス感がそこにあって心の底から感動するのです。クラシックなシュバルツとモダンなBlack IPAが共存する、極めて狭い隙間を狙って作られたのだと感じます。これだけビールが進化を続けていながらもまだ名前のついていない場所があることを教えてくれたこのビールとの出会いに感謝するのでした。
麦を醸造すればビールになるわけですが、「なんとなくやってみました」と「理想形が見えていて意図的にアプローチしている」ことは全く意味が違うと考えています。先人たちが生み出したレジェンド級の作品に感動し、その完全コピーから始まって自分のオリジナリティ確立に繋がるのでしょう。クラフトビールと「守破離」の話でも書きましたが、守破離についてCRAFT DRINKSはこう考えています。
「守」はオリジナルのものを完全にコピー出来るようにすること
「破」はオリジナルのものをアレンジ出来るようになること
「離」はオリジナルを超えて自身がオリジナリティを確立すること
このRoos Boos Schwartz IPAはシュバルツとBlack IPAそれぞれについてちゃんと理解した上で作られています。少なくとも液体からそれをひしひしと私は感じるのです。きっとBrouwerij Emelisseはそれぞれをきっちり作ることが出来るでしょうし、歴史や先人の作品、そしてその文脈に対する本質的な理解がある。その思想や方法論を学んだ上でこれが生まれているに違いありません。このビールはSchwartz IPAという新たな概念を私の中に作り出してくれた「離」そのものだと思っています。
知らないところにまだまだこういうものがわんさかあるんだろうなぁ・・・と思うとワクワクしますね。素敵な出会いを求めて来年もまた旅に出よう。