先日、クラフトビールについて書かれた記事を読んでいて、「あ、マジでヤバいぞ」と思った。
たまたまSNSで流れてきた初心者向けの記事である。クラフトビールとは何か、日本にはどれくらいブルワリーがあるのか、どんなビールを選べば良いのか。いかにも現在のウェブ記事らしく、数字も固有名詞も入っていて読みやすく整理されている。そして、困ったことに、個々の情報を調べてみるとかなりの部分が間違っていない。
だからこそ、「これは間違った記事だ」と簡単には片付けられない。けれども、問題はそこではない。もっと構造的で、より深刻なものだ。
たとえば記事の冒頭では、クラフトビールを「小規模な醸造所がこだわりと個性をもって造るビール」のように定義している。ところが、その少し先には「クラフトビールの市場シェアは1〜2%で横ばい」という数字が出てくる。記事は「造る側は増え続けているのに、飲まれている量はほとんど変わっていない」という橋渡しの説明を挟んでいるが、その橋がつないでいるのは「醸造所の数」と「市場シェア」であって、最初の「小規模」「こだわり」「個性」という定性的な定義ではない。市場シェアを計算するには、そもそも「何をクラフトビールとして数えるのか」という操作的な定義が要る。その一段階が、抜け落ちたまま文章は先へ進んでしまう。
これが自分の言う「高品質なゴミ記事」の一つの典型である。事実誤認だらけの記事なら捨ておけば良いのだが、高品質なゴミ記事はそうではないから厄介だ。個々の情報は概ね正しいのに、それらを結びつける関係がおかしい。ちゃんと読み込んでみると、「いやいや、そうはならんやろ」と言わざるを得ない。
なぜアカデミアと違ってネット空間ではこの種の間違いが訂正されにくいのか、AIがこの問題をどう深刻化させるのか、そして「批評」という営みにどんな意味が残るのか。note「クラフトビール批評通信」に書きました。よろしければ、そちらも覗いてみてください。
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この記事が「読みやすいのに何かがおかしい」と感じたことのある方は、noteのメンバーシップでは事例分析やクラフトビール批評をもう少し踏み込んで書いています。よろしければご検討ください。

