2018年春の定義変更対応商品は失敗したのか?

2018年4月の酒税法改正に伴ってビールの「定義変更」が実施され、副原料として果実、胡椒、山椒、ハーブ、野菜、そば、ごま、蜂蜜などを使用してもビールになるということになりました。今まで米・コーンスターチくらいしか認められていませんでしたから大きな変化です。これに合わせて大手はこぞって新定義対応商品を開発し発売したのを憶えている方も多いでしょう。その直前、「ビール定義変更と缶チューハイの隙間のことを考えた」と題してアメリカのクラフト大手のUintaのビールを例に文章を書きました。その時、こう綴っています。

4月から大手が投入してくる新定義に対応した商品群は柑橘の皮やスパイス、ベリーなどの果物を使用したもので、分類上ビールですが度数やテイストはだいぶRTDと近くなり、その境目が曖昧になってくるのではないかと予想します。もちろん製法は全く違うのですが、ぱっと見た時に「クラフトビール」なのか「モルトをベースに作った高級RTD」なのか見分けにくいような気がするのです。まだ現物を試していないので何とも言えないのですが、、、

発売当時一通り飲んでみたのですが、いつしかそれらはスーパーの棚から無くなってしまい今現在棚は缶チューハイで埋め尽くされています。新定義対応商品はもう残っていない。

今年1月にMSNから発表された記事では「フレーバービールはなぜ不発に終わってしまったのか」と題して予想ほどうまくいかなかった原因に触れています。上記の中で大手の1つの見解としてこうあります。

「一言で言えば、日本人にはまだ、馴染まないんでしょうね。ベルギーあたりですと、たとえばビールに果物を入れる、ジャムを入れる、あるいはシロップを入れて飲むとか、そういう飲み方が長く文化として定着している。そういう文化が日常的に根付いてこそ、消費としてもある程度ボリュームが増えるわけです。
 柑橘系で低価格のサワーやチューハイ系商品が数多く出ている日本で、ビールが定義変更になったからといって、いろんな副原料を入れて提案しても難しいということが、いまわかってきました。もちろん、当社も今後もビール商品の多様化は進めますが、欧米にはクラフトが馴染んできた、長い歴史と文化がある。そういう文化を、日本でも少しずつ作っていく以外ないと思います」

まぁ、値段の問題もあるでしょうし、そもそも副原料を使うことがクラフトなのか?という点も議論が必要です。とりあえずそのあたりは一旦置いておいて、引用部分を受けて当該記事は下記の提言で締められています。

2、3年後はまだ無理でも、2026年にはビール類の酒税が一本化される(ビール税は値下げ、発泡酒や新ジャンルの税は値上げ)予定でビールの優位性が高まると目されることもあり、それ以降は “フレーバービール”が日本でも根付いていくかもしれない。

2026年までかかるのでは遅い、と思うのです。法律で強制的に値段が下がって消費が増える状況を待つよりも、今のままでも価値があるのであればその良さをもっと広く伝える方法を考えるべきではなかろうかと思うのです。

CRAFT DRINKSは敢えて「今のままでも価値があるのであれば」と条件をつけたいと思います。定義変更対応商品が失敗だったとして、そこから教訓を汲み取るにあたって「価値あるビールって何だろう?」という話から始めても良いのではないかと。皆様、どう思われますか?そして、今後どうしていけば良いと考えますか?