クラフトビールを応援するには冷蔵庫がポイントになるのでは?という話
私もアンケートに答えたのですが、Best Beer Japanからクラフトビールの現状に関するレポートがnoteに公開されました。厳しい状況については本文に当たって頂くとして、その中で「クラフトビールファンに出来ること」が挙げられています。どれも至極納得のものなのですが、CRAFT DRINKSが特に注目したいのは下記2点。
2. 6本セットより大きいロットで注文する
大きいロットで頼むとリットルあたりの送料が抑えられる。出荷作業を減らすことができ、新規顧客を見つける負担も減らせる。3. 1回以上注文する
毎月が勝負になっている。ビアバーに行くのと同じ頻度でビールを注文しないと売上のギャップを埋められない。
確かにそういうことなんですよね。1本と言わず、なるべく多い本数をまとめてオーダーした方が諸々の効率も良いし、ブルワリー側の助けになる。そして、それを一回とは言わず、何度も出来ればビアバーに行くのと同じだけの利益がブルワリー側に確かに生まれるかもしれない。
その主張はよく分かるし同感なのですが、なかなか難しいよなぁ・・・とも思うのです。業界関係者としては「その通り」と思う反面、1人の飲み手として「そうは言ってもさぁ」と呟きたくもなるわけで。裏腹なのですよ、この部分は。
ビール購入にかけることが出来るお小遣いが充分にあったとしても他の問題があるのです。
冷蔵庫にスペースが無い
もう致命的に無いのですよ、本当に。6本入れるので精一杯というのが一般家庭の実情ではないだろうか。在宅勤務が増え、それに伴って自炊の回数も増えました。あまり出歩かずに済むよう、買い物もなるべく控えて一度にたくさん買い溜めしておくという方も多いと思います。そうすると、冷蔵庫が食材で一杯になってビールを入れておくスペースがそれほど残っていないことに気がつくのです。
クラフトビールの通販が増え、日々様々なものがリリースされているのは各種SNSで知るところです。気になるものがたくさんあるし、応援の意味もあって買いたいのは山々なのだけれど、届いてしまっても保管しておく場所が冷蔵庫の中に無い。24本まとめてセットにしてオーダーしたいのだけれど、流石に一般家庭ではしんどいですよね。腐ったら困るから食材を外には出せないし、常温でビールを置いておけば傷んでしまうし、、、どうしよう。
そうだ、ビール用にもう一個冷蔵庫を買えば解決だ!
・・・と、言うのは簡単だけれども実行するのはなかなか難しい。新しい冷蔵庫の置き場所も必要だし、自分ひとりの一存で出来るとも限らない。家族がいればその同意を取り付けるのも一苦労でしょう。大きなものに買い替えるにしても色々ありそうですし。冷蔵庫問題というのはなかなか難しいのです。
以前、駅と家の間にという文章を書きましたが、そこでこう綴っています。
ここまで物流の良い日本にいながら言うのも変な話ですが、たとえば駅と自宅の間にブルーパブがあって、その場で作るNEW ENGLAND STYLE IPAやサワーエールが死ぬほど美味しかったら遥々アメリカやベルギーなどから輸入しなくても良いのです。その方が経時変化も圧倒的に少ないはずなのだから。「地元のあの酒屋さんが僕の最高の倉庫」という意味で「家飲み最強」と言いたい。
国内でも遠方のブルワリーから取り寄せるのは同じことだと思います。大きなロットのものを通販で購入しようにも保管場所がないから買えない人は多いと思うけれども、日々2〜3本入れておくスペースくらいは確保できるのではないでしょうか。生活圏内に素敵なビールを少しずつ補充出来る場所があれば冷蔵庫のスペースを気にする必要もない。瓶や缶でなく、グラウラーでも良いでしょう。大きなロットで買わずにその都度必要な分だけ買って帰るような日常のライフスタイルを長く続けることが本質的な文化醸成に繋がるのではないかと私は考えています。
もちろん今は平時ではないし、緊急事態宣言下でそういう理想論を掲げるのはおかしいのかもしれませんが、頭の片隅に置いておくのも悪くない気がしています。アフターコロナのクラフトビールの在り方はシーン全体で遠くない将来検討すべき課題だと思うからです。
今すぐそういう環境にならないのは仕方ないのだけれども、飲食店に対して期限付き酒類小売免許が付与されるようになったので多少改善してくれるのではないかと期待しているところです。通販ももちろん良いのですが、免許を取った飲食店を含め、生活圏内にある地元の酒屋さんでいつも普通に良いものが買える方が日々のQOL向上に寄与すると思います。
お酒の販売免許を持っている人だからそういうポジショントークしてるんでしょ?
とお考えになる方もいるかもしれません。まぁ、正直そういう気持ちがゼロではないですね、はい。私はビール屋さんなので立場上そういう思考も無くはないです。しかし、昨今のシーンの流れに対して少々懐疑的なところもあって、私は敢えて地元の酒屋さんでの購入を推したいです。
クラフトビールは心の疲れを癒やし人に活力を与えるものだとすると、その補充場所はいわばガソリンスタンドみたいなものです。タンクの残量が少なくなってきたら近場で必要十分な量をその都度補充出来るのが理想で、そういうインフラが整っているから何の心配もなく日々生活を送れるわけです。日本にガソリンスタンドが1軒しかなかったら普及しないし、1000km先にしか無かったら困る。ローカルに根付く前提条件には「アクセシビリティ」というか、ふと思い立った時にすぐ入手出来る環境が担保されていることもあるのではないかと思います。
街の酒屋さんがローカルにおけるクラフトビールカルチャーの発信基地として、そして心のガソリンスタンドとして、あらゆる街に1軒ずつはあったらいいなぁ。きっとそこにコミュニティが生まれる。