ブルワリー直販問題を考える② 街場のパブはどうすべきか

さて、前回はアメリカの事例を取り上げ、ブルワリーと流通の間で少々揉めている「直販問題」について触れました。タップルームやブルーパブが街場のパブに悪い影響を与えているというお話です。酒販免許に関する法律の問題でもあるので、ロビー活動も行われています。

確かに日本でも近年ブルワリーが繁華街に直営パブを開店するようになりました。近隣に卸先であるビアパブがある場合は揉めたりするんじゃないかと思ったりもするのですが、その辺りはどうなのでしょうか?問屋や酒販店へのマージンがかからない分安く提供できる可能性が高いわけですから、相場よりもリーズナブルに提供価格を設定されたら周りのビアパブにとっては困ってしまいますよね。傍から見ていてちょっと心配になります。直営店が近くにできたら内容がかぶってしまっては仕方ないのでパブではそのブルワリーのビールは扱わない、もしくは扱う量をそれなりに減らすでしょう。ブルワリーから見れば売上減少です。とはいえ、直営店は「そのブランドを知って頂くための旗艦店」という意味合いも大きいですし、ブルワリー側はリスク以上にトータルリターンが見込めると考えて出店しているのでしょうね。

さて、前回最後にこう書きました。

法律や消費者のマインドの変化に合わせて個別の企業が自身の利益を求めて最適化していった結果、周辺や全体にとっての最適にはならなくなってきたのかもしれませんね。

大手と同じことをやってもその規模から考えて勝てるわけがないのでブルワリー側は違う手を打たねばなりません。ブルワリーから見てお客さんのお客さん、つまり飲み手が望む幸せを提供する形に近づいていくと直営店出店ということになるのかもしれませんね。とはいえ、それは直接のお客さんである飲食店を無視した形であり、なかなか三方良しとはならないようです。

さて、それでは繁華街のビアパブはどうしたら良いのでしょうか?ブルワリー直営店が出来ないことを突き詰めていくしかないでしょう。ケグを仕入れなくてはお店が成り立たないのですが、原価だけ見たら直営店には絶対に勝てません。であれば、タップリストのセレクトをより洗練させ、「仕入れるものを選べる自由」を存分に発揮すべきです。センスが良くて質の良いものだけがあるセレクトショップをイメージして頂ければよろしいかと思います。仕入れの極意でも書きましたが、流行や仕入れ値を基準に選んでいくと遅かれ早かれ差別化が出来なくなるでしょう。「流行・安さ・限定」に頼ると新手が現れた時に厳しいのは間違いありません。故に、そのお店らしい仕入れ、つまりラインナップでお店の哲学や美学を表現し、その上でビールを使いこなすテクニックや提供方法なども含む「サービス」で対抗するべきなのだと考えます。

たとえば、定番ビール、ありますか?では具体的にタップのラインナップとその選定について指摘しておりますので今一度お目通しください。

ちなみに、CRAFT DRINKSはブルワリー直営店の出店を完全に否定しているわけではありません。ブルワリーの隣にそのブランドのビールが飲める場所、つまりタップルームを作ることには大賛成です。ブルワリーを訪問し、現場で味わえるという体験は何にも代えがたいものです。単に飲むだけでなく、そのブランドに触れ、感動体験をして頂く為の飲み手との接点としてタップルームは必要だと考えます。ブランドエンゲージを強める仕組みとしては最強ではないかと思うのです。