【ビアパブ向け】仕入れの極意

Apr 17, 2018

偉そうなタイトルを付けましたが、個人の経験からこれが最強だと思っている「仕入れの極意」について今回書きたいと思います。

世界的にクラフトビールが人気を博しており、特にIPAをはじめとするホッピーなビールが大流行しています。個人的には少し寂しいのですが、世界的に見てヴァイツェンなど欧州発祥のモルティでクラシックなタイプは最近ビアギークの間ではあまり評価されていない状況です。ビアパブでケグを仕入れ、お客様に提供するにあたって当然ビール自体のクオリティが高いことは大前提なのですが、流行りのもの、レアな限定品、もしくは仕入れ値の安いものを選びがちではないでしょうか。実際タップリストを眺めているとそういうものばかりになっていませんか?

IPAに代表されるホップフォワードなお酒はフレッシュなうちに消費した方が良いものだと思いますから店舗では回転、消費スピードを気にします。繋いでみてもなかなか出ず、いつの間にかフレッシュさが無くなってきてしまってはロスになってしまうからです。その意味でビールファンに人気で黙っていても消費されていくIPAを繋いでおくことは店舗運営の観点から考えて妥当だと思います。その時手に入るものを順々に色々と繋いでいくことになるわけですが、流行や仕入れ値を基準に選んでいくと遅かれ早かれ近隣の店舗とラインナップが似通ってきて差別化が出来なくなるでしょう。「流行・安さ・限定」に頼ると新手が現れた時に厳しい。非常に難しい問題です。

たとえば、有名ブルワリーの限定品がリリースされるとその銘柄が同じタイミングで全国のビアパブで開栓されますよね。それ自体を否定はしませんが、そういう時期は「あーぁ、この時期どこに行っても勧められるのは限定品のアレばかりだなぁ・・・」と私自身結構うんざりしています。セッティングや状態によって結果は変わりますからどこで飲んでも同じ味わいが保証されているわけではありません。もちろん何度飲んでも構わないのですが、個人的な意見としては限定品よりもとにかく真っ当に美味しいものが飲みたいのです。個別の銘柄のファンになるよりも実は心の底ではお店自体のファンになる方が楽だと考えています。そのお店のセンスやクオリティ、審美眼にかなったものであれば失敗することは無いだろうという安心感があるとビールはもっと美味しくなる気がしています。

昔話に少しだけお付き合いください。20代の頃、ウイスキーを多く扱うオーセンティックバーで働いていました。その時の師匠からこんなことを言われたのを憶えています。

ウイスキーは1本700mlだから1ozの提供で23杯分。提供価格をイメージしながらテイスティングしてこの味わいを喜んでくださるお客様が具体的に23人頭に浮かんだら仕入れ値が幾らであってもそのお酒は買うべき。絶対にロスしないからね

あぁ、なるほど。そういう考え方もあるのか!と目から鱗が落ちました。「仕入れ値が××××円だから1杯○○○○円で提供しなくちゃならないし、これだと高すぎるかなぁ。売れずに残っても困るし、うーん・・・」などとごちゃごちゃ考えていたその当時の自分には衝撃的だったのです。気分やタイミングなど色々な条件はあるでしょうが、誠意を持ってお勧めしそれを召し上がって頂いた結果ご満足頂けるであろうお客様が23人具体的に浮かべばそれは間違いない。確かにそうだ。

たとえば、です。20Lのケグを仕入れる場合、テイスティング分や泡を切った時のロスを考慮してもUSパイントで40杯は提供可能です。日曜定休のお店だとして週6日営業しているわけですからその6日の間に自信を持ってお薦めできるお客様が40人来店するのであれば1週間で完売。仕入れ値に関係なくそのケグは絶対に買いです。仮に6日としましたが、空冷サーバー設備があれば12日で計算することも可能でしょう。液種によっては1ヶ月単位で考えても良いかもしれません。小瓶なら1ケース24本入りなので24人、ということです。こう考えてみると案外仕入れは難しくないと思いませんか?「流行・安さ・限定」に頼るよりもよっぽど確実で、そのお店にしか出来ないそのお客様の為の特別なサービスになると思います。

仕入れの極意とは「お客様のことをお店側がちゃんと把握していること」に尽きるのではないでしょうか。



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