クラフトビール専門配送会社

アメリカのクラフトブルワリーにStone(ストーン)という会社があります。日本でも飲めますし、あのマークは非常にインパクトがあるので「あぁ、アレね」と仰る方も多いのではないでしょうか。

さて、ストーンはビール醸造をしているだけではなくて、関連会社としてクラフトビール専門配送会社も運営しています。その名もStone Distributing Company。HPもありますので、是非ご覧ください。

Stone Distributing Company

初めてこの会社のことを知った時、ため息が漏れました。あぁ、美味しいクラフトビールのために本気なんだなぁ、と。配送費がガンガン高騰してて、物流の効率化・スリム化はクラフトビールシーンにおいて最大の課題となりました。そのソリューションの1つとしてこの会社のことを是非知って頂きたいです。同社のシステムのすごいところは大きく3つ。下記に引用しますが、ポイントだけ訳しておきます。

①All Drivers Are Certified Beer Servers(配送員は全員クラフトビールを勉強した人)
Our drivers go through the independent Cicerone Certification Program to learn to handle beer with the utmost care. Proper handling and appreciation of beer means it arrives in the hands of your customers in the pristine condition intended by its brewers.
ドライバーは全てシスローンというクラフトビール学習プログラムを修了した人です。適切な取扱いを理解してお届けします。

②Biodiesel-Powered Refrigerated Trucks(バイオディーゼル燃料で稼働する冷蔵車)
How cold? Ice cold. Our fleet ensures that the beer we distribute will never be delivered less than cold. We use biodiesel because we aim to minimize our environmental footprint as much as possible. We were the area’s first full fleet of 100-percent-refrigerated trucks for all products, not just kegs.
配送は100%冷蔵でビールを傷めませんし、バイオディーゼル燃料車を使用し環境にも配慮しています。

③Refrigerated Warehousing(冷蔵倉庫)
Cold storage is key to delivering beer of the freshest and highest quality. We have two warehouses, and the amount of cold beer stored in them only keeps growing.
使用している2つの倉庫はビールをフレッシュで品質を落とさずお届けするために冷蔵倉庫になっています。

長くなるので引用しませんが他にも専門スタッフを常駐させ、色々と提案もしてくれる体制が整っています。素晴らしい。

2017年実績でストーンは全米8位の規模です。ストーン一社だけで運営することも不可能ではないかもしれない規模ですが、この配送会社はストーンのためだけではなくその他のブランドも一緒に運び販売しています。取扱いブランドはこちらのページでご確認ください。人気のブルワリーをたくさん抱えていて、ここ一社からの供給でビアパブ運営には全く困らないほどです。

御存知の通り、アメリカではインベヴをはじめとする大手がこぞって芽が出そうなクラフトブルワリーを買収しています。それは大手の主力ビールであるライトラガーが右肩下がりで他の部分でテコ入れしないといけないからですが、更に酒販店や問屋に対してリベートを支払うことで自社商品の為に店頭の棚を取りに来ています。たとえばこういう記事を御覧ください。

Anheuser-Busch Distributor Incentive Program Raises More Concerns Of A Stifled Craft Beer Market

酒販店も問屋も商売なので儲かることがしたいわけで、取扱いにリベートが発生して更に売れるのであれば願ったり叶ったりです。その分独立系クラフトブルワリーのビールは棚から外されてしまうわけですからクラフトブルワリー側からしたら大迷惑。とはいえ、黙って見過ごしてはいられません。中小のクラフトブルワリーが集まって大手に対抗しようという意識がStone Distributing Companyには感じられるのです。男気がありますよね。

さて、日本ではブルワリーが経営する共同配送会社のことを聞いたことがありません。アメリカをはじめとする諸外国と税金や人件費、燃料費が全然違いますから直接比較することは難しいでしょうが、国内ではタップマルシェのような独占インフラが出来つつあるのですから独立系で突き進むブルワリーは一致団結してこういう取り組みを始めなくてはならないタイミングに来ているようにも思います。ケグも共通化して納品・回収も面倒見る会社が出来たらシーンは随分変わると思うのです。

・・・とはいえ、現実はそう簡単ではありません。ロジスティック専門会社を各社の出資で新会社として立ち上げることになりますが、それにはまず音頭取る人が出てこないといけないわけです。各社の個別最適ではなくシーンの全体最適の為にひたすら汗をかき、何かの時には責任取れる腹をくくった経営者が出てこないと実現はしないでしょう。いやぁ、ストーンのオーナー・Greg Koch氏はスゴいバイタリティですね、本当に・・・。

「誰かがやってくれるだろう」という他人事では何も変わらないです。ブルワリーの皆さま、同じ危機感を抱いているのでしょうから協力してこういう方向性も検討してみませんか?