タップマルシェとその意図 5
前回までのものを前提に論を進めて参りますので、まだ読んでいらっしゃらない方は以下からどうぞ。
タップマルシェとその意図 1
タップマルシェとその意図 2
タップマルシェとその意図 3
タップマルシェとその意図 4
さて、4回連続でタップマルシェについて書いて参りました。今回私たちが考えなければいけないのは日本のクラフトビールシーンにおける「ハードウェア問題」とその顕在化についてでしょう。この部分は極めて重要です。
第四回目でこう書きました。
専用サーバーというハードウェアに、展開ブランドというソフトウェアを組み合わせて来ます。他社は一切入り込む余地の無い独壇場です。今までオフプレミス展開中心だったものがオンプレミスにも進出するわけで、これは「棚とタップの取り込みと認知向上の相乗効果」を意味します。
ここ日本ではベルギーやアメリカと違って自家醸造が違法です。免許を持っていない人が度数1%以上のものを作ってはなりません。それ故、付帯する機材や道具、原材料などは不要であり、そう簡単には手に入りません。ビールサーバーに関して数軒メーカーが国内にあるものの、一般には発売していないのが現状なのです。その為、飲食店においては前提条件となるサーバーで展開できる範囲が現実的なクラフトビールの範囲となってしまいそうで、クラフトビールを愛する一人としては複雑な気持ちになります。クラフトビールはもっともっと広くて多くて楽しいし、その事実を知っているから制限なんてされたくないわけです。
海外の品評会で賞を取るような高品質なビールが中小のクラフトブルワリーから出てきています。ハード・ソフトに分けて考えれば、ソフトは充実してきたと言えると思います。(醸造量にも依るので入手しやすくなったかどうかは一旦置いておいて下さい。)それにもかかわらず、それを抽出し提供する為の機材が手に入らないというのはそもそもおかしな話です。クラフトビールが真に市民権を得る為には絶対に「ハードウェアにおける独立」がセットでないといけないはずです。
ビールサーバーを独自に入手する、もしくはパーツを集めて自作することは自由を得ることでもあります。その自由が多様性を担保します。しかし、作るにしても一定の知識は必要ですし、そのコストもそこそこかかります。完成後も使用しながら常にサニテーションなどに気を使い、定期的にメンテナンスを行う必要もあります。この辺りの部分をどうにか包括的に克服できないか?と私どもでもずっと考えてきましたが、ビール産業という超巨大な仕組みを前にしてまだ最終的な結論には至っておりません。しかし、早く何かしらの行動を起こさねばならないと考えています。誰かがやるのを待っていては遅いし、たぶん時間はそれほど残されていない。