急にクラフトビール天国になった日本とその裏側を想像してみる
ここ数ヶ月、ボトルショップの棚がすごいことになっているのをご存知でしょうか。世界各国からとんでもないビールたちが日本に大量に輸入されています。現地でもなかなか飲めないものばかりで驚きを隠せません。通常であれば私たち飲み手が渡航して飲みに行かねばならないところがビールの方から来てくれるのだから有り難いことです。16ozで1本1500円とか、ものによっては2000円を超えたりするけれども、飛行機代や宿泊費などを考えたら安いものです。日本は今正にクラフトビール天国と断言しても良いほどです。
1人のビールファンとしてビールが海外からじゃんじゃん入ってくることを喜ぶ一方で、急にこんな状況になったことについて一抹の不安があったりします。この状況の裏側には何かあるのではないか。「基本的に全量現地で消費されるような人気のマイクロブルワリーのビールが日本にも出荷できるということ」はどういうことだろう。そんなことを考えてみても良いのではないかと思うのです。
ここからは私の調べてきたこととその解釈を綴っていきます。あくまでも私の考えであって、もしかしたら事実とは違うかもしれないということは先に断っておきます。あしからず。
さて、ケグをメインに出荷していた欧州やアメリカのブルワリーは多いけれども、新型コロナウイルスの影響で販売先であったパブが閉鎖されたり縮小営業を余儀なくされてしまいました。そこでブルワリーはケグから瓶・缶に大きくシフトしたわけです。瓶・缶もそれなりに動いているけれども、ケグでの販売量を補うほどではありません。製造計画は完全に狂ってしまいました。レイオフも多数起きていて、ブルワリーの稼働も落ちたままです。すでに廃業したブルワリーもあると聞いています。
「日本向けに輸出してもらえませんか?」
「申し出は嬉しいけれど、地元に供給するので手一杯で日本に出せるほど在庫も無いよ。タンクを増設したら可能になると思うからまたその時相談しよう」
ブルワリーとこういう会話をしていたインポーターも多かったことでしょう。まぁ、体の良いお断りの文句であった可能性は大いにあるのですが、ここ一年で状況は一変します。このコロナ禍でブルワリーは設備増強を見送ったものの、現状の生産能力のままでも輸出に回せる在庫が生まれたのではないかと思うのです。幸か不幸か、絶対無理だろうと思われていたブルワリーのビールがこの感染症によって日本で飲めるようになったのかもしれない。
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そんなことをぼんやり思いながら、私は相変わらず色んなものを飲んでいます。そう言えば、現地に行かねば飲めなかったものがここ数ヶ月の間に劇的に増えていて、それらを追いかけるのに精一杯でした。その反面、最近国産クラフトビールをほとんど飲んでいないことに気が付くのです。最後に飲んだのが何だったのか、ちょっと思い出せないくらい飲んでいない。いやぁ、これはまずいなぁ。
いつこのパンデミックが終息するかまだ分かりませんが、しばらくの間世界中からとんでもないビールが日本に入り続けることでしょう。こういう感じの飲み方も続くということなのだろうか。自問自答してみても答えはまだ見つからない。今買い支えるべきは海外のブルワリーじゃなくて国内ブルワリーなんじゃないのだろうか?と思いつつも、その気持ちを一蹴するほど魅力的な黒船銘柄に溢れている今の状況をどう捉えたら良いのか分からずにいるのです。
たとえばこのスムージーみたいなもの、すごく美味しいんですよ。間違いなく美味しい。でも、それを手放しで喜んでいて良いのだろうかと少し不安になる。
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