ドラフトビールを最高の状態で出す10のコツ④適切なガス

数年前とは全く様相が異なり、クラフトビールという存在が大分認知されてきたと思います。大都市のみならず、今後ますます多くの人に知られていくでしょう。その時、単にケグを仕入れて提供すれば良いのではなく、「飲み手の感動体験につながる良い状態で提供すること」が重要になってくることでしょう。美味しく提供する為にすべきことについてBAがヒントを10個挙げていますので、一つずつ見ていきたいと思います。

前回までの内容は以下です。こちらも是非お目通しください。

ドラフトビールを最高の状態で出す10のコツ
ドラフトビールを最高の状態で出す10のコツ①温度
ドラフトビールを最高の状態で出す10のコツ②ビールホース
ドラフトビールを最高の状態で出す10のコツ③ケグの賞味期限

今日は4つ目の「適切なガス」について。上記リンクから原文を引用し、ざっくりとですが訳をつけておきます。

4. Utilization of Correct Gas
Never use compressed air! Installer of draft system should help determine best blend of CO2 and N2 (nitrogen) to optimize balance and efficiency of draught pour. A secondary regulator for each beer line gives the advantage of customizing gas balance for different beer styles served.
適切なガスの使用
圧縮空気は絶対に使ってはいけません。システム構築者はドラフトビールを注ぐのに最高のバランスを生み出す炭酸ガスと窒素ガスのベストな混合率を決定する助けにならねばなりません。ビアラインそれぞれに付いているセカンダリーレギュレーターによって異なるビアスタイルを適切に注げるようガスのバランスをカスタマイズ出来ます。

非常に分かりにくい・・・説明が端的過ぎるような気がしますが、アメリカをベースにした文章なので仕方ありません。3つに分解してそれぞれ紐解いてみます。

①圧縮空気
これは簡単です。ビールは空気に触れて酸化すると劣化します。だからケグから抽出する場合はいつもガスを使用しているわけです。書いてある通り、空気は使ってはいけません。

さて、「ビールが空気に触れると酸化して劣化する」のですから、「ビールが空気に触れなければ空気を使っても大丈夫」です。ビールが完全に独立した袋に入っていてガスにも空気にも触れないキーケグの場合はエアーコンプレッサーで抽出も可能です。参考までにyoutubeにアップされている動画をご紹介します。キーケグしか使用しないのであればエアコンプレッサーを一台買えば全て解決ですね。もはやガスボンベも要りません。

②炭酸ガスと窒素ガスのベストな混合率
この点は少し発展的な話だと思います。以前こちらの記事でこのように書きました。

今までだとギネスが窒素ガスを使用したビールの代表でしょう。最近だとアメリカのレフトハンドのスタウトが日本でも手に入るようになりましたが、他のものは聞いたことがありません。また、ドラフトで窒素を常時使用しているお店もなかなか無いように思われます。窒素ガス(ナイトロとも言います)のビールは一つの表現技法としてもっと日本でも広まって良いものだと常々思っていました。泡のテクスチャーが全く違うのです。比較的導入しやすい技法だと思いますので、ビアパブの方には是非ご検討願いたいところです。

ビールを抽出するのに炭酸ガス100%ではなく、窒素を混合して提供しているお店が海外にはたくさんあります。その混合する割合によってテクスチャーが変わります。ビアスタイルとその銘柄自体を見極め、お店側が理想とする形で是非ご提供下さい。

とはいえ、日本の飲食店向けにはギネスの「7:3混合」のガスが出回っているだけで、なかなか100%窒素のボンベを常備しているところは無いように思われます。個人的にはとても面白いと思うので是非導入して頂きたいです。酒屋さんでは手に入らないからかもしれませんが、食品添加物として認められている窒素ガスは日本にもちゃんとあります。また、もし手に入ってとしても「混合用減圧弁」が必要なのでご注意を。専門的な内容ですが、ご興味ある方はこちらでご紹介しているマニュアルなどに当ってみてください。

③セカンダリーレギュレーター
primary(最初の)に対するsacondary(第二の)regulator(減圧弁)のことです。ガスボンベから見て最初についているのがプライマリーで、各ケグに対して分岐しているのがセカンダリーというわけです。提供しているビールのビアスタイルがそれぞれ違うということは各ビールに対する適切なガス圧も違うということ。ビールに合わせて適切な圧力をかけましょう。ガス圧が合っていないと色々と問題が起こります。詳しくは前回の「ドラフトビールを最高の状態で出す10のコツ③ケグの賞味期限」も御覧ください。もちろんビールホースの長さにもご注意を。

美味しいビールを提供するためにもガスはしっかりコントロールしたいですね。