さて、そろそろ「流通と品質」の話をしよう⑦ 飲食店への配達の話

さて、そろそろ「流通と品質」の話をしようと題して連載してもう七回目。まだ終わりません。危険なポイントはまだまだたくさんありますので、引き続きお付き合い下さい。

さて、前回はハブからハブへの国内配送について書きました。もう一度一般的なビールの国内流通経路を確認しておきましょう。

【一般的なビールの国内流通経路】
醸造所や輸入元の倉庫→一次問屋→地方の二次問屋→街の酒屋さん→飲食店もしくは消費者

今日は「街の酒屋さん→飲食店」の部分に注目してみたいと思います。街の酒屋さんは取引先である飲食店にお酒を配達しています。ほぼ毎日、です。理由は簡単で、お店にストックスペースが無いから。近年面積に対してなるべく多くの席数を取るように設計してあるお店が多く、ストックスペースが限られていることがほとんどです。世の流れです。通常、使ってしまって明日補充しなければならない分を営業終了後に留守番電話やfax、メールで酒屋さんに注文し、翌日配達してもらう仕組みになっています。ケース単位ではなく、バラ混載で配達してくれることがほとんどなので、お店側からすると非常に嬉しいサービスです。酒屋さんの倉庫を自分の倉庫として使えるようなイメージでしょうか。

その時のトラックはどんなものか?googleで「酒屋トラック配送」などと画像検索してみてください。街でよく見かける風景が出てきます。多くの場合幌をかけただけの平積みトラックで、冷蔵ではない。幌を外せばガンガン直射日光が当たります。

さて、ちょっと時間軸と共に配送の流れを考えてみましょう。飲食店さんが確実に受け取れる時間帯は結構少ないことに気が付きます。主に「ランチ前まで」・「ランチ後〜ディナー前」の2パターンです。たとえば、ランチ前に納品するならこうなります。

23:00 ディナータイム終了。片付け。明日補充する分をカウントする。
23:30 faxで酒屋さんに注文。
05:00 酒屋さんがfax確認。倉庫に指示して注文のお酒を店舗ごとにまとめる作業開始。
08:00 荷物を積んでトラック出発。
11:00 ランチ前に納品完了。(ランチ前に納品してディナーまでにお酒を冷やしたいお店はこうなります。)

お店が遠くなければ1時間以内に納品できるでしょうが、遠ければそうもいきません。前回書いた配送車の車内温度の話で指摘した問題が出てきます。では、ランチ後〜ディナー前の納品ならどうでしょう?

23:00 ディナータイム終了。片付け。明日補充する分をカウントする。
23:30 faxで酒屋さんに注文。
05:00 酒屋さんがfax確認。倉庫に指示して注文のお酒を店舗ごとにまとめる作業開始。
13:00 荷物を積んでトラック出発。
16:00 ランチ後に納品完了。

午前の納品を終えたトラックが倉庫に戻り、再度積み込み。午後の配達に出発しますが、外気温が一番高い、魔の時間帯にトラックは走っています。危ない。

飲食店で働いた経験のある方は思い浮かぶかもしれませんが、ランチをやっていないディナータイムだけ営業するお店だとお酒の納品は「合鍵制」だったりすることがあります。酒屋さんの物流効率化の為、そして出勤時間の関係でお店側が受け取りの立会いが出来ない為、お互いを信頼してお店の合鍵を酒屋さんに預けるとがよくあります。誰もいない間に納品しておいてくれるのです。非常に便利で有り難い。しかし、ちょっと待ってください。その時、店内には普通エアコンがかかっていませんよね。扉も窓も閉まった密閉空間です。あとはご想像の通り。そんな空間でお店の人が来るまで放置されるわけです。あぁ、それではお酒が可哀想です・・・。

物流効率、コストダウンを求めるとどうしても品質を担保できなくなると思います。ものの安さと物流品質は絶対に共存しない。トレードオフの関係にあると言って良いのだと思います。