さて、そろそろ「流通と品質」の話をしよう⑥ 配送車の車内温度の話

一般的なビールの国内流通経路をおさらいしておきましょう。

【一般的なビールの国内流通経路】
醸造所や輸入元の倉庫→一次問屋→地方の二次問屋→街の酒屋さん→飲食店もしくは消費者

今回は「一次問屋→地方の二次問屋→街の酒屋さん」のうちの「→」の部分に注目してみたいと思います。国内の配送についてです。以前、ビールの流通 生販三層というものを書いたので、そちらも合わせて読んで頂けると助かります。その投稿で以下のように書きました。

ビールは多くの場合中間業者を通して流通し、その物流を効率化しています。各地の問屋さんにまとめて配送し、問屋さんが地元の酒屋さんに小さいロットで配送、そして酒屋さんが販売します。それぞれがその地域でハブ機能を受け持ち、効率を上げています。これにより全国展開が可能になるわけです。大手のように全国津々浦々に同じ商品を大量に供給するには非常に便利な仕組みです。

順に配送ロット、つまり運ぶ単位が小さくなっていき、「少量・多品種」の流通に対応していきます。お店の店頭にたくさんのものが並ぶには中間流通のハブ機能が重要であるわけです。

では、このハブからハブへの流通の間に品質は保たれているのだろうか?と考えてみたいと思います。いきなり妙な例を挙げて申し訳ありませんが、パチンコ屋の駐車場に止めた車に赤ちゃんが置き去りにされて亡くなったなどというニュースを毎年何回か見ます。非常に痛ましい事件ですが、車の中は人間が死んでしまうくらい高温になるということを示しています。日本自動車連盟(通称JAF)が調査したデータがありますので、こちらを御覧ください。実験に使用されているのは大型トラックではありませんが、小口の配送に使う軽自動車と状況は似ていると思います。4月の外気温20℃程度の日に観測したものです。

なんと、外気温20℃にもかかわらずピーク時には車内温度が50℃ほどになります。グラフと見ると、車内に置いておいたペットボトルの水は45℃ほどになっています。さて、そろそろ「流通と品質」の話をしよう②でご紹介したBAの資料を再度ご確認ください。ビールにとって40℃はほぼ即死の温度です。4月でこれですから、夏本番の時期は言わずもがな。

もちろん朝から晩までずっと車内に置いておくわけではないでしょうが、たまたま荷受けが多くてすぐに受け取れないとか、やむなく再度配送してもらうなどということになればこの事例の状態になることでしょう。長距離配送であれば避けられない自体かもしれません。夏場はもっと温度上昇スピードが早いに違いないでしょう。せっかくリーファーコンテナを使用して日本までちゃんと運んでも国内配送がこれでは全く意味が無いです。常温流通は非常に怖いと言わざるを得ません。

物流費をケチった分、召し上がって頂くお客様の幸せも減ってしまう、そう考えていいのではないでしょうか。