缶が足りない、そしてその意味

Craft Brewers Have to Compete for Beer Cansと題されたニューヨークタイムの記事を本日はご紹介致します。

クラフトビールが流行し、大量に消費されています。醸造所も一生懸命ビールの仕込みに励んでいるのですが、足りない。ビールが足りないのではなくて、容器が。今問題になっているのが缶の調達です。容器として缶は非常に便利で、瓶よりも軽いしかさばりません。遮光性もあるので、日光による劣化もない。小売店も扱いやすいので、缶の需要が急速に伸びています。以前は難しかったのですが、近年モバイルカナー(mobile canner)が生まれ、小さな醸造所でも缶ビールを生産できるようになったそうです。しかし、急激な缶の需要に缶メーカーが対応しきれていません。注文が入ってから作るようでは間に合わない状況だそうです。(この記事はインベヴの買収やリベートばら撒きの話なども書いてありますので、是非全文読んでみてください。)

缶が足りないほど、クラフトビールが人気なのは間違いないでしょう。それは肌感覚でも分かります。そこでちょっと考えてみたいのです。「どこの誰がどう飲んでいるのだろう?」

ケグ(いわゆるビール樽)、瓶、缶。ビールの容器は主にこの3つです。運搬効率を考えたら容量の大きいケグが一番良い。業務用ですね。瓶は年単位の熟成が出来る点が良い。では、缶はどうでしょうか?缶は一般的に長期熟成には向かないとされています。容器として軽くてデザインの自由度が高く、かさばらないので運搬効率も悪くない。フレッシュな状態でバンバン消費されるものが缶にはぴったりです。そして、それは「業務用」ではなくて「家庭用」で。

ビアパブで飲むなら家では飲めないものを試したくなるのが人情です。わざわざ酒屋さんやスーパーにあるものを選ばない。とするとケグに手が伸びる。時には熟成した瓶ビール、輸入物の珍しいものかもしれません。それに対して、バドワイザーやクアーズを例に出すまでもないですが、缶は酒屋さんやスーパーなどの店頭で6本パックで買うもの、という住み分けができつつあるのでしょう。缶が足りなくなるほどクラフトビールを家で消費することが多いと推測されます。クラフトビールが好きだけれど、近くにパブは無いし、毎日行けないから家で飲みたいと考えている人が買っているのではないでしょうか。

「家飲みクラフトビール」が普及しているわけです。では、日本はどうか?東京、大阪など大都市を中心にクラフトビール専門の飲食店が増えていますが、地方にパブや酒屋さんがまだまだ少なすぎます。全国的に考えれば、日々お店に行けるような人はごく少数。今の日本は通信販売がこれほど発達しているのですから、ネットで取り寄せて美味しい瓶ビール、缶ビールをご自宅で楽しむというスタイルがもっと広まって良いはずです。家庭用市場にクラフトビールが浸透し、お家で当たり前のようにクラフトビールを飲むようになってこそ、クラフトビールが文化になったと言えると思います。