インベヴ、リベートばら撒き作戦に・・・
ちょっとがっかりする記事がありました。「The King of Beers Wants to Push Craft Brews out of Your Supermarket」というタイトルだけでも悲しくなります。しょんぼりするだけではいけないと思い、今回はこれについて少し書いてみたいと思います。
世界最大のビール会社AB Inbev(アンハイザーブッシュインベヴ、以後インベヴ)がリベートをばら撒いて自社商品の拡大に乗り出すそうです。大きいから出来ることなのですが、なんだかなぁ・・・。
この話の前提として、前回の投稿を是非読んでおいてください。仕組みがよく分かると思います。
”three tier system”(本文中では”three tiered system”ともなっていますが、同じことです。)、つまり生販三層において大事なのは「どこかを省略して販売しない」ということ。その約束を守れなければ成り立ちません。インベヴが消費者や飲食店に直接ビールを販売することは絶対に無いのです。まず、ここは押さえておきましょう。
さて、生販三層をそれぞれの立場で考えてみます。一消費者としてビールを買おうと思ったら、スーパーマーケットや酒屋さんに行き、「今日は何にしようかなぁ?」と棚の前をうろちょろしながら悩むわけです。スーパーマーケット側からすれば、「お客さんに売れるものを仕入れたい」と考えます。売れない、人気の無いものは要りません。
だから、問屋さんに「お客さんに人気のものを卸してください!」と言うことになります。同じように、問屋さんは醸造所に「お客さんに人気のものを卸してください!」と言います。生販三層は最終消費者の意向が反映される仕組みなのです。
大手の主力商品であるライトラガーは減少傾向にあり、どのメーカーもそれについて悩んでいます。クラフトビールが台頭しつつあり、マーケットシェアは10%を超えました。まだまだ大きな差はあるものの、このまま黙っているわけにはいきません。うかうかしていられないのです。
大手は消費者から自社商品が選ばれなくなってきたことを、例えば「美味しさや品質の向上」でカバーしようとするのなら理解できます。しかし、今回の話はもっといやらしい話。分かりやすく言うと、
「うちのビールを扱ってくれたらお小遣いあげるので、プッシュしてね。よろしく!じゃ、このリベート取っておいて。チャリーン。」
お金で解決、です。消費者が求めているものはこういうことではありません。
生販三層はその順序を守ることが前提です。直販して拡大していくことが出来ませんから、販売してくれるところに「チャリーン」とするわけです。その方法論が議論を呼ぶのはもちろんですが、リベートを受け取る問屋、酒屋があるとういうこともまた事実です。棚のスペースは有限です。リベート欲しさにクラフトビールを減らしてインベヴ商品に切り替えていくお店も今後増えると推察します。寡占化を心配するのも無理ありません。果たしてそれで良いのか?それで消費者は幸せになるのか?という疑問が大いに残るわけです。
実はこんな話は珍しくありません。もう何十年も前から日本のビールはリベートありきでやってきたので。ここ日本ではもっと高度にシステム化されたリベート体系が存在します。このことについてはまた別途書きたいと思います。