場所はあまり関係ない、と思うのです
以前とあるビール祭りに行き、ブルワリーのブースからこんな会話が耳に入ってきました。
ここは人通りが少なくて、ちょっとしんどいなぁ
あっちの方はたくさん人が歩いていて羨ましいよね
・・・え!? 私にとっては冗談で言っているのだと信じたい発言で、正直ビックリしました。
そもそも場所ってそんなに重要なんでしょうか?ビール祭りの多くはイベント会場内に屋台を出している形なので駅からの経路やブースの配置、その他の導線などから考えて人通りの多いところと少ないところがあるのは当然です。でも、人通りの多い一等地であってもイマイチなこともあるし、不利に見える場所でも行列が出来ることがあります。この違いは何だろうと考えるわけです。
それは飲食店に置き換えてみればすぐに分かることだとCRAFT DRINKSでは考えています。
人通りが多いということは「フリーのお客様がふらっと立ち寄る可能性が高い」ということ。駅前の牛丼屋、立ち食いそば屋はその典型で、安く大量にバンバン売る形式がぴったりです。薄く広く多くの方に試して頂くのには向いていると思います。でも、その前提として「お客様がそのブランドのことを知っている」ことが勝負の鍵。人間誰しも全く知らないものに手を出すのは怖いからです。ですから、薄っすらで構わないのでブルワリーやそのブランドとエンゲージしているお客様がたくさんいるのであれば費用が多少かかっても一等地に出店すべきだと思います。認知がイマイチだけれども一等地に出したいのであれば出店前に広告費をがっちりかけるとか、SNSをフル活用するなど準備をしておかねばならないでしょう。
逆に人通りの少ない場所であっても「濃いエンゲージのお客様は探してでも来てくださいます」。そこに行くことが目的化しているからです。人通りが少ない方がゆっくりとお話も出来ますし、お好みを伺って最適なものをオススメ出来ますよね。そういう接客こそが高い顧客満足を生むのですし、一等地の店舗には出来ない「語り」が可能になると思うのです。行列が出来て止まることを知らない注文をじゃんじゃんさばく「作業」をするよりも、なぜこれが美味しいのか、どういう想いが詰まっているのかをちゃんと語るだけの余裕があって一杯ずつ丁寧にお届けすることの方がクラフト的ではないでしょうか。
冒頭の言葉は、要は「条件」と「意図」がマッチしていないから生まれるのだと考えるわけなのです。
一旦まとめます。
エンゲージは薄いけれど、ブランドは認知されていて知っている方がが多い→一等地にドーンと出店でバンバン出す
エンゲージは濃いけれど、ブランド認知はまだまだ少なく、ファンが少ない→裏路地で一人ひとりに丁寧に語る
もちろん濃いエンゲージの方がたくさんいらっしゃることがベストですが、そこに到達するまでにはおそらく上記のどちらかを一旦通過するはずです。これらは最早全く違うモデルなのですが、召し上がって頂く飲み手の皆様とどういう関わり方をするのか、もしくはどういう関わり方をしたいのかを改めて考えてみるのも損ではないように思います。
とはいえ、売上というか杯数が出ないと赤字で困る・・・と思われる方もいらっしゃると思います。そこで、CRAFT DRINKSから提案です。いつもの3倍高い、スーパースペシャルビールをファンの方だけのために作ってみてはいかがでしょうか?杯数が1/3でも結果は変わりませんし、3倍お話する時間が長く取れればエンゲージもより高まるでしょう。それくらいぶっちぎりのクオリティのものが出せれば場所がどこでも全く問題にならないと思います。
以前、お酒をコンテンツとしたツーリズムについて少し書きましたので合わせてご覧くださいませ。