タップマルシェは何銘柄まで増えるのだろう?

CRAFT DRINKSではタップマルシェについて今まで何度か書いてきましたが、そのタップマルシェにこれから伊勢角屋麦酒とFar Yeast Brewingが加わるそうです。

「Tap Marché(タップ・マルシェ)」の取り扱いブランドを拡充

大々的に発表されたので様々な媒体でご覧になった方も多いのではないでしょうか。伊勢角屋麦酒については数ヶ月前に日経新聞にちらっと出ていたのでCRAFT DRINKSとしては「やっぱりそうか・・・」と思いました。こういう流れなのですね。

上記の報道を受けてSNSやブログで「もっと色々増えるといいな」とか「地方の小さいブルワリーの応援になれば」などの意見が多数見られました。その気持ちは分かります。私もそう思います。実際、タップマルシェは何銘柄まで増えるのでしょうか?CRAFT DRINKSでは参加できるブルワリーは殆ど無いと予想しています。それは何故か?

タップマルシェは3Lのペットボトルが4本入る仕組みで、現在2500台ほど稼働していますが今後5000台まで増やすそうです。ちょっと計算してみましょう。

週に3Lペットボトルを2本、つまり6L消費するお店を標準モデルだと仮定して考えると、1店舗で月間24L。5000台になった暁には月間で120KL必要です。タップマルシェ対応のビールは全部で17銘柄ありますので、人気に偏りが無いと仮定しても1種類につき月間約7KL生産しなくてはなりません。実際には欠品しないようにする為にもう少し多めに必要だと思います。月間8KLくらいでしょうか。

ふと思うのです。ビールは季節変動が激しいお酒ではありますが、1銘柄だけ参加したとしても単純計算で月間8KLとなれば年間で約100KLの規模。既存商品も作りつつ、年間100KL純粋に増産出来るくらいタンクに余裕があり、人員も確保出来ているブルワリーって日本にいくつあるんでしょうか?

東京商工リサーチのデータによると、アンケートに回答したブルワリーの中で上位3社は1000KL超えでぶっちぎり。4位以下は400KL以下となっており、10位のブルワリーでは152KLです。11位以下の数字はこのページでは分かりませんが、タップマルシェに参加しようとなるとブルワリーはその生産量を最低でも2倍もしくはそれ以上に伸ばさなければならないことになるでしょう。設備や人員も含め非常に大きな投資をしなくてはなりません。近年開業しているブルワリーは非常にコンパクトに設計されていますから、そもそもブルワリー内にタンクが増設できるのか?という問題もありますし、現実的に考えて参加出来るブルワリーは殆ど無いのではないかとCRAFT DRINKSは予想しております。タップマルシェの仕組みは非常に優秀ですが、このスキームに乗って拡大路線を突き進む事ができるブルワリーはそもそも少ないのだと考えます。すでにそこそこ大きいブルワリーが更に大きくするためのプラットフォームなのではなかろうかと。

この路線ではない中小の独立系ブルワリーは正しい逆張りをして確かな強度でアピールしていかないとこれからは生き残れない時代になっていくのでしょう。そこで、大手が出来ないことを突き詰めていくのはどうでしょうか?物流費が高騰し続けているわけで、その分最終価格に転嫁されていき、値上げはあっても値下げはない状況です。こういう状況ですから、全国展開、主に東名阪への外販をしなくても成り立つような「地元経済圏でのナンバーワン」になる方がプレイヤーが少ない分勝てる見込みが高いように思うのです。軽トラ30分で配達出来る地元こそ大事にすべき存在です。グローバル物流時代になった今、もう一度ローカルについて考え直すべき時代になったと思います。もしこれが成り立つのであればそもそも送料値上げなどという議論自体が要りません。「輸入ビールなんていらないよね、地元のが最高に旨いんだから」となれば最高だと思いますよ。