【要ブックマーク】シードルの作り方とシードルオンタップ1stについて
シードルオンタッププロジェクトで開発した日本初のケグ内二次発酵シードルである”シードルオンタップ 1st”がもうすぐ解禁です。その前にまずはこのシードルがどういうものなのか、改めてご紹介致しましょう。シードルオンタッププロジェクトのfacebookページに信州まし野ワイナリーの醸造家、竹村氏がお書きになった内容をまとめて掲載致します。
シードルとは?
シードルはリンゴからできている!
リンゴは畑でできる!
シードルは畑でできる!
シードル作りの8割は畑で終わっています。残りの1割を醸造家が手を加えて、もう1割が瓶の中で眠っている間に出来上がります。
いきなりですが、こう思っています。何種類かシードルを作りましたが、畑ごとに違う味わいになります。やはり、風土の違いが大きいのでしょうね。風土とは、気象、土壌、環境だけでなく、そこに手を入れる人がいて、初めてそう呼べると思います。
シードルに適したりんごの話
私が思うシードルに適したりんごとは、小玉でしっかりとした酸味があり、糖度もそこそこあり、渋味も少しあるとベスト。ですが、このようなリンゴがなかなかないのです。そこで、考えるのがブレンドです。
酸味を活かすりんご(紅玉、ブラムリー、グラニースミス、ピンクレディ®、ジェネバなど)
糖度を活かすりんご(ふじ、シナノゴールド、つがる、シナノスイートなど)
香りを活かすりんご(王林、とき、ゴールデンデリシャス、ジョナゴールドなど)
渋味を活かすりんごや洋梨(ずみ、海棠、受粉樹の実、ルレクチェなど)
日本ではシードル用りんごというものが存在していないので、このようなブレンドで味を調えていく方法が取られることが多いです。今回作るシードルでは、いろいろと考えたブレンドのリンゴを旬の時期に収穫して使用してます。
シードルの作り方
収穫したりんごは、まず農家さんの手によって丁寧に選果されます。病果や腐りのあるものが取り除かれるのはもちろんですが、作りたいシードルをイメージしながら選果が行われます。それは、同じ品種のリンゴの中にも酸味のあるものや渋味や香りのあるもの、一つ一つ違ってきます。それを農家さんが出来上がりのシードルをイメージして選んでくれているのです。農家さんは、食べなくてもわかるレベルになっているので、ほいほいと選んでいきます。凄いです。
大切に選んでくれたりんごを、洗浄します。冷たい水と細かな泡できれいに洗浄していきます。当社では、この際にりんごを半分に割って内部を点検することも多いです。たまに、虫害や病気が内部に発生していて外からは分からないことがあるためです。
洗ったリンゴは破砕という工程に入ります。リンゴを細かく砕いていきます。ミキサーやハンマークラッシャーという機械によって、丸ごと粉々に砕いていきます。これは、この後の搾汁工程を容易にするためです。
皮も付いたまま粉々にしていきます。皮にはポリフェノールなど、重要な成分も多く含まれています。
余談ですが、この破砕したりんごもろみをすぐに搾汁せずに、何時間かそのままの状態にしておく作り方もあります。キュバージュといってフランスではよく行われています。スキンコンタクトの意味合いとわざと酸化させることにより、色と香りを出す方法です。この辺りも研究しないと。
りんごの搾汁
ミキサーにかけて、細かくしたしたりんごもろみを搾汁機(プレス機)にかけて、ジュースのみを取り出します。この搾汁機(プレス機)はたくさんの種類があります。
1.油圧、もしくは手動で垂直型にプレスするバスケットプレス、パックプレス。これらが最も古典的で、伝統的な搾汁機です。
2.ステンレス製の筒の中に大きなゴム袋が入っていて、この袋を圧縮空気によって膨張させ、りんごを外壁に押し付けて圧搾するメンブランタイプの搾汁機の使用も増えてきました。
3.大手企業などは連続的搾汁をするためにスクリュープレスやベルトプレスを使用しています。
様々な搾り方がありますが、目的はみんな一緒です。ですが、味わいには違いが出てきます。
また、搾汁のやり方でも味わいや香りに違いが出てきます。搾汁の圧力をどのタイミングで、どのくらい、どれだけの時間かけるかは、経験値がものをいうところです。各メーカーの腕の見せ所になりますね。
ブドウを搾汁するのとは異なり、もろみが細かく密度が高いので搾りづらいために、もろみを袋に入れてから搾汁するところも多いです。この方法のほうが、ジュースの通り道ができるためにスムーズに搾汁できます。
海外ではこの通り道のためにワラを使用したり、もみ殻を混ぜて搾汁したりするそうです。いろんな菌もついてくると思いますが(笑)。
搾汁後の工程
まず、分析を行います。糖度、比重、pH、総酸度、資化性窒素量。最低限これだけは測定しておきます。そうしないと、この後の作業で何をどうしたらいいのかわからなくなります。搾ったジュースの状態を目に見えるよう(数字)にしておきます。
搾りたてのジュースはとても酸化しやすく、色々な菌にも侵されやすい状態です。なので、分析したpHをもとに、酸度調整と亜硫酸塩の添加を行います。これにより、酸化と微生物汚染を防いでいます。
次に、このジュースにペクチナーゼを主体とした酵素をほんの少し添加します。この酵素は濁りの元となるペクチンやたんぱく質を沈殿させてくれます。1~2日静置しておくと、上澄みはクリアーなジュースになっています。この上澄みを別のタンクにそっと移し替えます。これをデブルバージュ(果汁清澄)といいます。きれいになったジュースに酵母を添加していきます。
酵母の添加、発酵
酵母を添加して、1~2日後(温度にもよりますが)には目に見える形で発酵が始まります。ぷくぷくと炭酸ガスの発生が見えます。発酵の進み具合は、比重測定などの分析で見ていきます。香りや味わいも毎日のように変わっていきます。
発酵が1/3ほど進んだ時に、発酵を順調に進ませるために発酵助剤(主に窒素源。その他に微量のミネラルや、サバイバルファクター)を添加します。
ブドウよりもリンゴはもともと資化性窒素の含有が少なく、発酵に必要な栄養分が不足しています。不足したまま、発酵を続けると嫌な香りが出てしまったり、発酵が止まってしまうことがあります。
およそ2週間から4週間で1次発酵が終了します。発酵の終了は、やはり比重計やアルコール分析を行って判断します。発酵終了しているシードルは炭酸ガスの発生もないために、非常に酸化に敏感になっています。
一次発酵終了後に、少し落ち着かせたシードルは滓引きに入ります。クリアーな上澄みだけを別タンクに取っていきます。
ここで、必要に応じて濾過をかけたりします。きれいなベースワインが出来上がりました。後は詰める作業です。
シードルの充填
アルコール一時発酵の終わったベースワインは、比重1.000以下になっています。
瓶内もしくはケグ内二次発酵をする場合にはここに糖分(ショ糖・ブドウ糖・果糖・もしくは濃縮ジュース)を添加します。
これは瓶内二次発酵する際の酵母の餌になります。この糖分を瓶内で酵母が消化することにより、炭酸ガスが生まれます。糖分の量は、欲しい炭酸ガスの量により変えています。大体ですが、8g/Lのショ糖の添加により、2barほどの炭酸ガスを得られます。と同時に0.5%程度のアルコール上昇があります。
すでにきれいなベースワインにしてあるために、ワイン中の酵母の菌体数が減少しています。このために、酵母を再度添加してあげます。ついでに、栄養剤も添加して、スムーズな発酵ができるような環境を作ってあげます。そうしないと、せっかく作ったシードルが瓶内二次発酵中に、嫌な香りをたくさん出して、開けた瞬間に大変なことになります。
当社の瓶詰は全て手作業のために、毎年、打栓機か人間の肩が壊れます(笑)この点、KeyKegのメリットが際立ちます。とても楽です。
瓶詰したシードルは、8~14℃の場所に置いて瓶内二次発酵をさせます。最初の1カ月で、発酵自体は終了します。炭酸は出ます。けれど、そこから、更に3~6カ月熟成して味が落ち着いてから出荷します。
瓶内の酵母が死滅して、自己分解を始めるのが6カ月過ぎのために、半年以上寝かせたシードルはまた味わいが変わってきます。
※キーケグへの充填については【プロ向け】キーケグ充填大解説にて詳しくご紹介しておりますのでご覧くださいませ。
“シードルオンタップ 1st”の今
シードルオンタップ1stは8種類のリンゴ(ジョナゴールド・紅玉・むつ・シナノスイート・スターキングデリシャス・シナノドルチェ・とき・アルプス乙女)を使用した、爽やかな酸味のあるドライなシードルです。ワイナリーで二次発酵の進み具合を器具を使って計測したところ、計算通り2bar程度まで上がっております。経過も至って順調。充填してから3ヶ月以上経ち、そろそろいい具合になりました。この記念すべきシードルを7月30日開催の東京シードルコレクションで遂に解禁です。CRAFT DRINKSもEclipse first -Bar & Sidreria-様との共同ブースにて出店し、その場でお試し頂けます。今回は有料試飲銘柄となりますが、是非お召し上がりくださいませ。ケグ内二次発酵にて仕上げてありますので、豊かな細かな泡もお楽しみ頂けると思います。
なお、こちらのシードルを飲食店様向けにも販売致します。初回先行予約は東京シードルコレクションにて承ります。醸造および販売元のまし野ワイナリー様ブースにて予約表をご用意しておりますので、お立ち寄りくださいませ。詳細については現地でご説明差し上げます。
開催場所はキッチンスタジオ hue plus。長野シードルコレクションは前売りでチケットがソールドアウトしてしまったので、気になる方はパスマーケットでお早めに!皆さまにお目にかかるのを楽しみにしております。