ドラフトビールを最高の状態で出す10のコツ②ビールホース

数年前とは全く様相が異なり、クラフトビールという存在が大分認知されてきたと思います。大都市のみならず、今後ますます多くの人に知られていくでしょう。その時、単にケグを仕入れて提供すれば良いのではなく、「飲み手の感動体験につながる良い状態で提供すること」が重要になってくることでしょう。美味しく提供する為にすべきことについてBAがヒントを10個挙げていますので、一つずつ見ていきたいと思います。

前回は温度についてでした。そちらも是非お目通しください。今日は2つ目の「ビールホース」について。上記リンクから原文を引用し、ざっくりとですが訳をつけておきます。

2. Maintenance and Cleanliness of Lines
Perform draught line cleaning at a minimum every two weeks, per Brewers Association Draught System Cleaning and Service Recommendations. All faucets should be completely disassembled and cleaned at this time as well. Acid cleaning should be performed quarterly. All vinyl jumpers and vinyl direct draw lines should be replaced annually. Draught lines may need to be replaced after pouring root beer, fruit- or pepper-flavored beers, sour beers, margaritas or ciders, due to permanent flavor influence.
ビールホースの洗浄とメンテナンス
BAの推奨では少なくとも2週間に一度洗浄をすべきとされています。注ぎ口は完璧に分解してその都度洗浄。季節に一度は酸で洗浄。ビニール製ホースは年に一度は交換。以下のものを通した後は残存する風味に応じてホースを交換する必要があるかもしれません。ルートビア、フルーツもしくはとうがらし風味のビール、サワーエール、マルガリータやシードル。

文章自体は平易なものですが、少々気を付けなくてはならないことがあります。3点挙げておきます。

①2週間に一度の洗浄
以前こちらでご紹介したマニュアルを御覧ください。2週間に一度の洗浄はただ水を通す洗浄なのではなく、水酸化ナトリウムなどを使用した薬剤洗浄のことを指します。

②分解洗浄
こちらについては以前「カプラー分解と消耗品交換の解説動画」という記事でご紹介しましたので、ご覧になって下さい。

③薬剤を使用した季節の一度の洗浄
厄介なのが季節に一度の洗浄です。ここも注意しましょう。前述のマニュアルを紐解くと、酸の洗浄と共にキレート剤等を使用したアルカリでの洗浄がセットになっています。海外の自家醸造グッズショップなどでは当たり前のように売っていますが、自家醸造が合法でない日本においてはビールサーバーシステム向けにこれらの薬剤がそう簡単には手に入りません。

この文章には書いてありませんが、洗浄の際は「目を保護するゴーグル、手を保護する手袋を必ず着用して作業すること」とマニュアルには注意があります。強い薬剤を使用する場合には当然のことですね。自分の身は自分で守りましょう。もちろん試験紙などを使って酸性やアルカリ性の洗浄剤をちゃんと洗い流して中和されているかを確認することもお忘れなく。

また、風味の強いビールを使用した際はホースに香りが残ることもあり、それが次に繋いだビールに影響します。その例として「ルートビア、フルーツもしくはとうがらし風味のビール、サワーエール、マルガリータやシードル」が挙げられています。

・・・うーん、相当ハードル高いですよね、これ。

専門店ではこれらに関する知識・経験が豊富なスタッフもいらっしゃるでしょうから、この通りになさっているところも少なくないと思います。しかし、これからクラフトビールをお店に導入しようとなさっている方やアルバイトスタッフの多いお店はなかなか難しいかもしれません。

成功しているビアバーがやっている5つのこと④清潔さ/日々のメンテナンスという投稿で、こう書きました。

先日行われたセミナーでこんな質問がありました。

ビールホースの水洗浄、スポンジ洗浄、薬品洗浄はいつやればいいのでしょうか?目安や参考になる日数や数字はありますか?

非常に大事な点だと思います。ご一緒した方たちは「樽交換毎に水洗浄」という点では一致しましたが、スポンジ、薬品洗浄に関しては必要に応じて、と言った感じでバラバラでした。官能評価上、加えて目視で汚れていたら絶対にやるべきだと思いますが、期間を区切るのは難しいようです。その時私は敢えて「ビールホースごと交換します。薬品洗浄はしません。その方が不安要素が減って安心なので。」と交換について少しだけ言及しました。洗浄に加えて「交換」というのも選択肢にあっても良いだろうと思っています。

もちろんサニテーションに関してしっかりと理論と実践方法を学び、お店でどのように行うのが最適なのかを検討することはとても大事なことです。学習コストをしっかりかける価値があると思います。しかし、なかなかそうもいかないのが現実で、実際こういうメソッドを学ぶ前に導入が進んでいるように思われます。であれば、上記の通り今のところ「超短期間でガンガン取り替える」のが最善策であろうとCRAFT DRINKSは考えています。