さて、そろそろ「流通と品質」の話をしよう⑨ 樽詰めビールとビアサーバー

さて、そろそろ「流通と品質」の話をしよう⑨ と題した連載も今日で九本目。品質を落とす可能性はまだまだ色々とあるように思います。クラフトビールが今注目されているからこそブームに甘えずに高い品質のものを召し上がって頂きたい、そう思っています。

さて、本日は「樽詰めビールとビアサーバー」について考えてみます。まず、簡単にですがビアサーバーについて押さえておきましょう。ビアパブをはじめとする飲食店では樽詰めビールをサーバーに接続して抽出し、提供しています。サーバーは冷却方法で2つに分けることが出来ます。

  • 瞬冷タイプ
    空冷タイプ

前者は津々浦々に普及している一般的なタイプです。「ニットク サーバー」とか「ボクソン サーバー」と調べると、すぐに「あー、あれか」と納得して頂けると思います。居酒屋さんなどでよく見かけるアレです。

サーバー内部をビールが通る間に冷却します。樽自体は冷えていなくてもちゃんとサーバーが冷やしてくれる便利なもの。いくら暑い日でもサーバーを通せばキンキンに冷えたものが出てきます。このタイプのサーバーは「ビールがサーバー内部を通る間に冷やす」ので、樽自体は冷えていなくても良い。冷蔵設備の中に樽を入れておかないので、室温の「外置き」の状態。ここが問題です。

是非知っておいて頂きたいことの一つとして、「ビールサーバーは調理場に設置しなくてはいけない」ということを挙げたいと思います。ホール側にタップがあってはいけないのです。これを守らないと保健所の検査に通りません。調理場のスペースにサーバーを置くわけですが、調理場は調理の関係上高温多湿になりやすい。そうでなくても冷蔵庫、冷凍庫など発熱する什器もたくさんあります。お店の環境によって様々ではありますが、「外置き」状態の樽が長時間高い温度になっていないか確認してみるのも良いと思います。

また、閉店後は電気もエアコンも消して帰るでしょう。となれば、夏場など「外置き」のままであれば室温の上昇とともに樽が高い温度になってしまう可能性があります。第二回目高品質クラフトビールのためのベストプラクティスガイドという参考文献をご紹介しましたが、温度と劣化の関係を表すグラフがありますので是非ご覧ください。

樽詰めビールは飲食店でないと楽しめないビールです。であれば、飲食店ならではのクオリティを担保して注いで頂きたい。温度管理はとても大事だと思います。そして、今回触れませんでしたが、ビールのガス量の見極め、かけるガス圧の計算なども必要でしょう。先に挙げた「空冷タイプ」は冷蔵庫にタップがついている状態のもので、樽自体を冷蔵してくれます。温度も一定に出来ますから「瞬冷・外置き」より遥かにコントロールしやすいはずです。

ご興味ある方は「gas volume chart beer」と検索してみてください。華氏、psi表示だったりしますが、サーバーに繋ぐビールのスタイルごとに参考となる数値が見つかると思います。