ビールがワインやウイスキーより難しい点
タイトルの通り、ビールがワインやウイスキーより難しい点があります。社会に出てからずっとお酒に携わっておりますが、つくづくそう思います。難しい点や相違点を挙げればきりがないのですが、今日はそのうち私が感じている3つ挙げてみようと思います。
- ウイスキーに比べて管理が大変
- ワインに比べて価格の幅が狭くて玉石混交過ぎる
- 熟成についてまだまだ認知されていない
まずは「ウイスキーに比べて管理が大変」について。ビールはウイスキーをはじめとする蒸留酒に比べて度数が低い。つまり、水分が多くて、エキス分が少ない。蒸留酒よりも圧倒的に劣化しやすいのです。ちょっと光に当てたり、揺らしたり、高温にしてしまうと劣化して格段に味が落ちます。ビールは本当に繊細なお酒で、抜栓してから常温で蓋をしておけばそれほど問題が起こらない蒸留酒とは随分違います。保管だけでなく流通過程でも劣化するので、お店に並ぶ前に既に死んでいるビールが恐ろしいほどあるのは本当に残念です。それほどビールの管理は大変なのです。
次に「ワインに比べて価格の幅が狭くて玉石混交過ぎる」について。ワインではデイリーに飲めるカジュアルな数百円のものからロマネコンティやペトリュスなど一本100万円を越すようなものも多数あります。しかし、ビールはプレミアがついているものでもそこまで高くありません。醸造所の発売価格で最高のものは、たとえばサミュエルアダムスのユートピアスあたりでしょうか。一本3万円ほどです。ビールは下は100円を切るくらい安いものから、上は数万円というの範囲で全て収まります。この価格帯に、例えて言うなら「キャッチボールからメジャーリーガーまで」存在するのがビールです。安くて美味しいものが手に入る反面、どうしようもないほど低品質なものもそこそこの値段で売られています。ワインやウイスキーほど値段が正直ではない。
最後に「熟成についてまだまだ認知されていない」ことについて。これは大手のせいだと思うのですが、「ビールは鮮度が命」、つまり仕上がってから一秒でも早く飲むのが良いという風潮を作ってしまいました。もちろん早く飲んだほうが良いビールもありますが、寝かせて美味しいものもたくさんあります。「全てのビールが早飲み向けではない」ということがもっと広まらなくてはならないと思うのです。酒屋さんで「賞味期限がもうそろそろなので、半額でいいです」と言われたことがありますが、「え??この銘柄なら2年経ったここからが本番なのに・・・。ラッキー!全部買っちゃおう!!」とほくそ笑んだことを思い出します。あれは良い買い物でした(笑)でも、「あぁ、ビールの熟成のことはまだまだ知られていないのだなぁ・・・」とちょっとがっかりもしたのでした。
作り手が美味しく醸してくれたビールをちゃんと劣化せずに流通させて美味しい状態で飲みたい、そう心から願います。その為に必要なことがあるのであれば関係各所が努力すべきですし、消費者側も知っておくべきでしょう。美味しいビールを主体的に求めていくとたとえばこういう点も大事になってくるのではないかと思います。
挙げた3点をこう言い換えることも出来ると思います。
- ラベルや醸造所の名前は美味しさを保証してくれません
- 高くて不味いものはたくさんあるし、安くて良いものも探せば結構ある
- ビールにも寝かせて美味しいものがあるのだから、全てのものに対して賞味期限は気にしなくても良い