催事のお礼と新刊「サシノミ3」リリースに関するお話
一昨日はおもしろ同人誌バザール、昨日は夏のコミックマーケットに参加しました。暑い中私どものブースにお立ち寄りくださいました皆様、誠にありがとうございました。深くお礼申し上げます。
お陰様で新刊「クラフトビールを仕事にしたいと思った時の業界俯瞰図」をたくさんの方に手に取って頂きました。著者として本当に嬉しいです。何かご不明な点やご質問等ございましたら奥付にある連絡先からお気軽にどうぞ。可能な限りお答え致します。
ビジネス、商品としてのクラフトビールはもちろんですが、クラフトビールには文化的側面、社会的な面もあると私は考えています。そういったことにご興味あれば私の主催する読書会に是非いらしてください。月に1回無料で開催しております。詳細についてはnoteのマガジンを御覧くださいませ。ちなみに、直近では再来週の8月25日に開催です。
さて、来週はComitia149に参加します。コミックマーケットとラインナップが同じ……と思いきや、また新刊をリリース致します。クラフトビール業界の有識者、著名人との対談シリーズ「サシノミ」の第3弾を発表します。
サシノミ3はJリーグ1部のガンバ大阪のオリジナルビール「ガンバビール」をテーマにチーム側のガンバ大阪、ブルワリー側の箕面ビールにそれぞれお話を伺いました。今回ご協力頂きましたガンバ大阪・亀井様、箕面ビール・大下様のお二方に深くお礼申し上げます。ありがとうございました。
地域・サッカーとクラフトビールがどう関わっているのか、逆にクラフトビールは地域・サッカーとどう関わっているのか。ここに見られる同一性と差異は大事な何かを示してくれるような気がします。それはきっと2024年の今を示すひとコマに違いない、そう私は思ったのです。
前回同様、今回も表紙デザインはちゃーりーさんにお願いしました。いつもありがとうございます。この場を借りてお礼申し上げます。
改めてサシノミとは何か。それをご紹介したいと思うので、本書冒頭の「はじめに」の部分を引用します。
私どもは2015年の立ち上げ以来文筆活動をしており、2019年より出版活動を行って参りました。日々飲み屋や自宅で酔っ払いながら、自分というフィルターを通して見えた世界を綴り、クラフトビールと呼ばれる何かに輪郭を与えようと必死になっておりました。それ自体は特に問題は無いのだけれども、一つ悩ましい問題に突き当たったことをここ最近強く感じます。
様々なことを調べ、考えていくと必ず「歴史的経緯」という、形は無いけれども確実に私たちに影響を与えているものがあることに気付かされます。平たく言えば、恐らくコンテクスト(文脈)ということになるのですが、およそ自明だと思われていることもかつてそうではなかった時代があり、それが何かのきっかけで変化し、転換しているのを知ることはとても意義があることだと思うようになりました。
眼の前の一杯が五感で美味しいと感じるのは事実として、それを「美味しいと感じさせる心的、文化的前提」が何によって構築されているのか。クラフトビールなるものがなんとなく良きものとされる根拠は何か。地ビールはいつクラフトビールになり、内包される意味はどう変化したか。たとえばこんなことを考えるのです。
私自身も社会を構成する一部であり、私というフィルターを通して現出する世界は社会を示すと考える一方で、部分が全体をどこまで正確に示すかについてはあまり自信がありません。私がこれまで書いてきたことは妥当性のあることだと今でも信じて疑わないけれど、それは私という名のフィルターの癖、偏りが多少なりとも含まれるはずです。そこに味があると言われればそれまでだけれども、異なるフィルターを通した時その結果は自ずと異なると理解しておかねばなりません。同じものを見て飲んで感じながらも、全く違った見解を持つ人がたくさんいます。「クラフトビール」という語が持つ意味は各人の持つ今日までの経緯によって異なるというわけです。
クラフトビールは日々の愉しみであったり、ビジネスであったり、社交の道具かもしれません。それが何であろうと良いのですが、しっかりと向き合った人の強い想いは他者を巻き込み、潮流の一滴としてシーンに対して多かれ少なかれ影響を与えていると思います。自分自身の興味関心を深掘りしていくこととは別に、その時々に人々が持った想いに何らかの形を与えて残すことに意味があるような気がしています。
海外の国からやってきた借り物の言葉や感情ではなくて、私たちがその当事者として真剣に思ったこと、それは名もなき市民のことであるから見過ごされがちだけれど、いえ、だからこそ、残しておかねば振り返ることも出来ず、迷子になってしまうことでしょう。いつ役に立つかは分からないものだけれど、必要になった時「あの時、こうだったね」と言えないよりは言える方がずっと良い。ただただそう思います。
本書「サシノミ」という企画は私とは異なる視点、異なる立場から眺めたクラフトビールシーンを記録するものとして立ち上げました。クラフトビール関係者はもとより、ビールを愛する一般の方も対象としてCRAFT DRINKS代表の沖が乾杯を通じて様々な角度から話を伺い、それを対話という形で記述していきます。クラフトビールという現象の過去から現在、現在から未来へと変化していく様態に輪郭を与えることが出来たらと願ってやみません。また、対話を通じて浮き彫りとなったクラフトビールに関する視点、論点を整理し、クラフトビールの新たな側面を模索していく試みとしても位置付けています。
クラフトビールに関する本だと言いながら、ビールの紹介もなく、ただただ酔っ払いたちが飲み屋で熱く喋っているだけの本ですが、そういう現場にシーンの本質の一端があると私は思います。クラフトビールはみんなのものだから。
……と、まぁ、こんなことを考えてこのシリーズを続けています。実際に私は試合観戦に行き、スタジアムでビールを飲んできました。その時感じたことも少し載せています。今回ガンバビールを2つの面から見ることで美味しさとは別の大事なことが見えてきたように思います。
本文の一部ご紹介する前にまず目次を以下に。
目次
はじめに 3
ガンバ大阪 亀井梨奈子さん 6
ガンバビールが出来るまで 6
サッカーチームの収益構造 10
サッカーと野球の違い、場外と場内 12
スポーツとエンタメ、クラフトビール 15
提供場所に関する苦悩 16
アップセル・クロスセル 19
購入に先立つアテンション、一回性の価値 20
ファンとサポーターの違い、クラブとの関係 23
良い記憶、時間、経験 24
まだ30年、もう30年 28
若者、熱狂的なファンとマーケティング 30
生まれゆくシナジー 33
Jリーグ開幕戦、スタジアムでガンバビールを飲みながら体験のことを考えた 35
箕面ビール代表取締役 大下香緒里さん 39
ガンバビールを始めるきっかけ 39
オリジナルビールを作るのは簡単? 40
これまでのガンバビールについて 41
サッカーとビール 43
箕面ビールとしてのメリット 44
スポーツ☓ビールの可能性 46
協業の形 49
若い人とお酒、地域とコミュニティ 51
では、本文を少々。箕面ビール代表取締役である大下さんにスポーツとビール、そして地域との繋がりに関して伺った「スポーツ×ビールの可能性」を引用します。
スポーツ☓ビールの可能性
沖 これはガンバ大阪に限ったことではないのですが、広くスポーツとビールの可能性についてはどうでしょうか?スポーツとお酒を考えると、ビール以外考えられないんですよね。ワインって聞いたことがないです。
大下 そうですね、ないですよね。
沖 これから野球、サッカー以外にも広がっていくでしょうか?もう既に例はあるでしょうか?例えば、きっかけ作りという点で言うと、音楽もアリかと思います。ウエストコーストブルーイングは電気グルーヴとやっていましたよね。箕面ビールでアーティストとコラボというのはどうですか?
大下 そうですね、うちではオファーを頂いたことはありますが、アーティストとコラボしたことはないです。
沖 これから何かそういう新しいジャンルとのコラボが出てくるのかな…
大下 色々出てくると思いますよ。私たちは今まで色々コラボをさせてもらいましたが、新しいジャンルとのコラボでしたら、JR山陽・九州新幹線とのコラボがありました。新幹線をイラストしたオリジナルラベルで、新幹線の社内で飲んでもらうコンセプトです。また大阪中之島美術館とのコラボではモディリアーニ展の会期中にモディリアーニラベルでボトルビールを販売など。これからも色んな切り口でコラボレーションはますます増えてくるんじゃないかと思っています。
沖 話をスポーツに戻すと、今例えばプロのバスケットボールリーグのBリーグやバレーボール、エンタメ色の強いものでいうとダンスのDリーグがあります。色々と出てきていてスタジアムやホールを盛り上げていこうと現場でのフードやお酒が注目されてるところがあると思います。今のところ、箕面ビールではサッカーのガンバ大阪と一緒にやっているわけですが、他のジャンルのスポーツと組み合わせて今後何かやっていこうという構想はありますか?
大下 Bリーグからは以前お声はかけてもらった事はあります。そうですね、ウエストコーストブルーイングがBリーグのビールを作っていますね。
うちについてはスポーツ団体、チームからお声がかかったりしてはいます。
沖 やっぱりそうですか。
大下 協賛の形式になりますので、実際、私たちは大手さんのような形での協力はできませんが、スポーツ観戦にはやっぱりビールはつきものだと思っています。ラグビーワールドカップの賑わいはすごかったですよね。世界中から母国チームの応援に沢山の方が来日され、ラグビーの場合試合期間も長くて一ヶ月はありました。それに合わせて地方から地方へと移動してくれて、各地でビールをすごく飲んでくれているな、と思いました。全国のブルワリーとも話したけれど、ワールドカップの恩恵はすごくあったなと感じます。
沖 あの時そうだったんですね。あれはコロナ前でしたから、2019年でしたね。
大下 居酒屋の飲み放題でケグが無くなることもあったと聞きました。
沖 テレビニュースでもやってましたね。
大下 ラグビーファンにビールを飲まれるお客さんが多いのかなとも思いますが、サッカーもそうだと思うし、出来たらその土地の試合に行ったらスタジアムの近くにあるその土地のクラフトビールを飲むという文化みたいなのものが根付いてくれたらいいなと思います。
その視点だと、東北だと楽天イーグルスの球場で東北魂のブースがありますよね。あれは素晴らしいことだと思います。
沖 そうですね。
他のスポーツの団体から声がかかっていると伺いましたが、やはりそういう気運は来てるんですね。
大下 そうですね。来ています。
ただ、どうしてもストーリーというか、地元ではない私たちが遠くの地方の応援をしたところでちょっと違うと思うんですよ。どこでも良いというわけではなくて。そこにはお客さんが私たちのビールを飲もうと思ってくれないと意味がないわけなんですね。そこはちゃんとお付き合いがあって、ベースにストーリーがあってというところが大事かなと思っています。
沖 お気持ちはよく分かります。ただ、ビジネスとして考えた時、地元の繋がりやストーリーが全く無くても良いかもしれません。例えば、タンクスケジュールが空いていて箕面ビールという名前を一切出さずに完全にOEMとして受けることは不可能ではないはずです。それはやっぱり違うでしょうか?
大下 そうですね。それは違うかなと思います。
沖 やっぱりラベルに製造者・箕面ビールと書いてあったとしても、そういう話じゃないですよね。
大下 そこはそうですね。
沖 大下さんから見て、スポーツとクラフトビールの掛け算のことを考えた場合、お客さん自身が地元感だとか地域との繋がり、ストーリーを求めてると思われますか?
大下 そうですね…求めているというか、その方がたぶん応援したいと思ってくれるんじゃないでしょうか。地元にガンバがあるから応援しようと思う人がほとんどだと思うので。地元愛というか、それが応援しようと思うことだし、地元愛があってこそかな、と。
本書「サシノミ3」はBASEに開設しているCRAFT DRINKSの本屋でご予約を受け付けております。予約特典としてちょっとお安くなっています。Comitiaの会場である東京ビッグサイトにお越し頂けない方はこちらをご利用くださいませ。
また、今回サシノミが第3号まで来たことを記念して「サシノミ1・2・3セット」も数量限定でご用意しました。3冊セットで500円安くなっていますのでこれを機に是非。ご検討のほどよろしくお願い致します。