イエチカビールノホンを読んで考えた次の一歩

夏にコミケに参加した時に同人サークル・悪人酒場さんの本「イエチカビールノホン」を手に入れました。結論から言うと、コンセプトが素晴らしい。CRAFT DRINKSとは全く違った視点ですが、是非ご一読頂きたい。

ここ何年かでクラフトビールに関するwebサイトも増えましたし、書籍も多数刊行されています。たくさん情報が出ることは基本的に良いことなのですが、全てが良質なものとも限りません。以前とある出版社の編集者とお話しした時に、クラフトビールの本は図鑑っぽいものが多いということで一致しました。多様性というキーワードのもと、ビアスタイルで区切って各社のビールをずらーっと並べたものです。「世の中には色んなビールがあるよ」ということは分かるのですが、それ以上でもそれ以下でもないわけです。そのことに価値がないとは言いませんが、似たようなものも多くて「ふうん、そうなんだ」という感想以外あまり浮かばないのです。

図鑑のような本でも製造元、輸入元が巻末に一覧となっていることがほとんどですが、「わざわざ電話するのも面倒だわぁ」と思ってしまう。問い合わせたとしても「○○市の××店に出荷実績はあるのですが、今そちらに在庫があるかは把握していません」となるに決まっている。それでも欲しいならそのお店に電話して取り置きしてもらうだろうけれど、何日も待ってでも欲しいビールならば今時はネット通販を使った方が楽だ。そんなこんなで実店舗である酒屋さんに行くということもなかなか無くなっているのではないか。そんな気がしてならない。

ビールはそのカジュアルさから世界で一番消費されているお酒になったのだと思うけれども、そのカジュアルさというものを因数分解すると安さだけでなく、入手しやすさという要素も多分に含まれると思う。つまり、取り扱い店舗が多く、欲しいと思った時に確実に手に入ることがその普及に大きく影響していると思うのです。

いやぁ、今日も疲れたなぁ。今晩ビールでも飲もうかな。帰りがけにコンビニかスーパーに寄っていこう

と思ったことが皆さんにもあると思います。これを考えた時から実際に飲むまでは長くても数時間でしょう。そして、帰りがけに寄るお店の選択肢もそこまで多くない。限られた時間とルートの中で欲求を即時的に満たすため、身近な場所で思い立った時にすぐ購入できることがかなり重要だと思います。

その点、イエチカビールノホンは素晴らしい。こちらには100種類弱のビールが掲載されていて、それぞれ購入できるコンビニチェーン、スーパーマーケットのマークが付記されていて大変便利です。どこに何があるのかを明示してくれるのは有り難い。どこにでもあるわけではないものを一覧にすることだけでなく、場所とセットにしたのは素晴らしい。図鑑の先は「飲みたいという欲求の充足スピードを上げること」なのではないだろうか。結構大事なキーワードだと思う。

悪人酒場さんの既刊本はComiczinにて通販しています。イエチカビールノホンだけでなく、フレーバービール特集のものなどたくさんありますので是非ご覧ください。