成功しているビアバーがやっている5つのこと⑥使用するグラス
成功しているビアバーがやっている5つのことと題して、アメリカの事例を元に以下の5点について考えていきます。一番最初に書いた通り、これはアメリカの話なので完全に日本と同じというわけでもないかもしれませんが、参考になると思います。良い部分は取り入れて、日本アレンジを加えれば良いでしょう。
第六回目の今日は5. Glassware(使用するグラス)について。craftbeer.comの記事の該当部分をまず見ていきます。
5. Glassware
Pairing the proper glassware with the proper beer styles is becoming an expected addition to the craft beer experience. The CraftBeer.com Beer Styles section provides glassware suggestions and serving temperatures for 79 beer styles. Check it out and encourage your favorite beer bars to pay attention to their serving temperatures and glassware selection.
そのビアスタイルに適切なグラスを合わせて使うことはクラフトビールに期待されるものになりつつあります。リンク先ではグラスの合わせ方提案をしており、ビアスタイル79種類の提供温度も掲載しています。チェックしてみてください。そして、お気に入りのビアバーでもこういうことを気にしてもらえるよう、お話してみてください。
またまた「詳しくはリンク先で」ですが、この話もとても重要ですね。私もスタイルによってグラスを変えるべきだと考えます。それによって飲み手の印象、そして感動体験の絶対値が大きく変わるからです。どんなスタイルのビールであっても決められた量ありきで常時同じグラスを使用すればオペレーションを楽にします。けれども、そこから先は生まれてこないのではないでしょうか。「より美味しく楽しんで頂きたい」という気持ちや「この液体のポテンシャルを最大限引き出すにはどうしたら良いだろう?」と考えることを放棄してはならないと思うのです。
たとえば、シェーカーパイントグラスのことが思い浮かびます。お店で何かパイントサイズで頼むとかなりの頻度であのグラスで出てきませんか?CraftBeer.com Beer Stylesで“American IPA”を見てみると、「チューリップグラス・10〜12℃」が推奨されています。あれ??シェーカーパイントグラスじゃない!!実際、私個人の感覚からしてチューリップグラスの方が良いだろうと思う銘柄がかなりあります。他のスタイルにしてもBA推奨はパイントグラスでないことが結構あります。重ねられるし丈夫だけれど、パイントグラス一本槍なのはちょっとねぇ・・・
そんなことをロシアンリバー醸造所のお二人も言っています。「何でもかんでもパイントグラスじゃダメ」
チャーリー パパジアンはじめ、適したグラスを使いましょうと提言しています。
別の団体はレストラン側からの視点でCraft Beer Restaurant Reference Library としてBeer Glasswareを取り上げていて、形状だけでなく、大きさ(容量)についても言及しています。良かったらこちらも御覧ください。
私個人の経験から考えた必要最低限のグラスは家飲み品質向上計画 番外編 ⑦ 実際に使っているグラスという投稿で示した通りです。メインで5種類使っていますが、最近teku glassも入手したのでそれもよく使います。上部がストレート気味のワイングラスのような形状で、液面もしっかり取れるし流量も結構あるので非常に気に入っています。実際、醸造所でも推奨するくらい流行っていますね。
自宅で使う分には一点ものでも構わないし高価でも良いのですが、飲食店の現場、つまり業務用ではなかなかそうもいきません。形状はもとより価格、耐久性、買い足しが出来るかなど大事な点がたくさんあります。それらを満たすものの例として一つご紹介したいのは“Libbey”(リビー)というブランドです。リビーはアメリカの業務用グラスで大きなシェアを占めていて、実は日本でもすでに結構使われています。たとえば、ブルーボトルコーヒーのエスプレッソやラテはリビーのジブラルタルだったり。
リビーからはビール用だけでもかなりの種類が出ていて容量違いも豊富です。是非一度オンラインカタログを見てみて下さい。値段も手頃だと思いますし、ビアフライト用ボードセットも売っています。
前回、よく言われるビアスタイル別の適温についてこう書きました。
感覚を言語化し記述していく中でまず間違いがないだろうと広く認識される「公式」や「定式」が生まれるのだと思います。であれば、「××××をすればOK」という公式を追体験し、自分の感覚においても正しいか再確認することが意味を強くするとも思うのです。
きっとグラスも同じことで、「××××専用グラス」は本当にそうなのか?を考えてみるのも悪くない気がします。形状と強調される香味の関係、そしてその受け止め方は各人で若干違うはずですから。他にも応用できるかもしれません。液量を加減した方が良かったりもするでしょう。やはりグラスについても色々と研究すると面白いと思います。
海外からどんどん新しいものがやってきますし、国内の醸造所もものすごい勢いで増えています。それと同時にお店もここ数年で爆発的に増加していて、これから競争が激化していくでしょう。差別化の方法としての「グラスとその使い方」は皆様と広く議論したいと思っています。