さて、そろそろ「流通と品質」の話をしよう③ 輸入時のコンテナ

前回前々回と「流通と品質」について書いてきました。第三回目の今回から個別の事象に焦点を当てていきます。日本で流通するビールの流通経路、つまり自分の手元に来るまでのルートがどうなっているのか考えてみたいと思います。今日は「輸入時のコンテナ」についてです。

現在の輸入ビールの一般的な流れをざっくり書いてみます。

【一般的な輸入ビールの流通経路】
生産国→船→日本の港→輸入元倉庫→一次問屋→地方の二次問屋→街の酒屋さん→飲食店もしくは消費者

随分とたくさんの人や場所を経由して届いているのが分かると思います。その一箇所でもミスがあるとビールは途端に美味しくなくなります。美味しいビールは関係各所の努力によって成り立っているのです。

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さて、今日は「船→日本の港」という部分に注目してみます。空輸でない限り、通常は船便でビールは輸入されます。ものすごく大きな貨物船にコンテナで積み込まれ、遥か彼方の日本まで輸送されます。そのコンテナが重要です。ビールに使われるコンテナには2種類あります。

①ドライコンテナ
②リーファーコンテナ

ドライコンテナは温度管理をしていないコンテナで内部は日光や気温で温まるのに対し、リーファーコンテナは冷蔵設備が付属してあり内部の温度を一定に保つ機能を持っています。前者の輸送費は安いのに対し、後者は高く付きますし冷蔵設備の分内部も若干狭くて積載能力も落ちます。多少デメリットはあるとはいえ、ビール輸送にはリーファーコンテナ一択です。絶対に、何が何でもリーファーコンテナでなくてはいけません。

さて、そろそろ「流通と品質」の話をしよう②でご紹介したBAの資料を御覧ください。8ページ目に「ビールが劣化するまでの推定時間とビールの保管温度の関係」を表すグラフが出ています。ビールは50℃以上で即死、40℃でもほぼ即死、30℃では瀕死の状態です。

次にこちらを御覧ください。輸送中のコンテナ内部の温度に関するデータがあります。5ページ目のグラフが分かりやすいと思いますが、陸上作業や港での積み込み作業やらでコンテナヤードに置かれた間に50℃を越すタイミングがあるわけです。すなわち、即死。昔under deck、つまり船の下部で水面以下なら大丈夫だという謎の神話もありましたが、輸送に関して言えば海上の話だけではないのです。

container yard

「冬なら大丈夫じゃないの?」という意見もあるかもしれません。いえ、ダメです。欧州から輸送する場合、シンガポールなど赤道近くを通ります。一年中暑い場所ですから、コンテナが上部に積まれていたら輸送中にアウト。陸上で作業があればコンテナヤードに置かれてしまうのでそこでもアウト。こういう原因を排除するにはリーファーコンテナを使用するしか無いのです。

多くの輸入元は瓶や缶の裏ラベルに「リーファーコンテナ輸入」とか「定温コンテナで運びました」などと書いてくれています。そう書いてあれば日本の港まではちゃんと運んでくれたのだと信じて良いでしょう。もし書いていないものがあれば、リーファーコンテナを使っていないのかもしれません。

CRAFT DRINKSの取り扱う輸入ビールは例外なく100%「リーファーコンテナ使用品」です。それが最高の作り手の最高の作品への最低限の敬意でもあると考えています。