クラフトビールの力 後編

一昨日、クラフトビールの力 前編と題してpliny the youngerのことをご紹介しました。前回はビールのご紹介だけでしたが、今回はその周辺も含めたお話。

実は。泣く子も黙るIIPA、pliny the youngerのリリースによって何が起こったのかを数字で示している資料を見つけました。なるほどー、すごいなぁ、と私としては感心しきりなのです。すごく面白い。

ECONOMIC IMPACT STUDY PLINY THE YOUNGER 2016 RELEASE

要点を箇条書きにして挙げていきます。

  • 2016IMPACT $4.88 MILLION(pliny the youngerの発売に関わる全ての経済規模。現在のレート換算で約5.2億円)
    16,000+ TOTAL ATTENDEES(参加者の合計 16000人以上)
    40% STAYED IN LOCAL LODGING(参加者の40%以上が地域のロッジに宿泊。つまり、旅館業にも好影響。)
    AVERAGE SPENT – $73 per person(参加者一人あたりが使った平均金額73ドル。日本円で約7700円。)
    AVERAGE SPENT – $165 per night at RRBC(ロシアンリバー醸造所で参加者が一晩で使った平均金額165ドル。日本円で約17000円。)
    43% ATTENDED in the past (過去に参加した人の割合43%。つまり、43%がリピーターで、57%が初参加者)
    83% were FROM CALIFORNIA(カリフォルニアから来た人が全体の83%。※1)
    92% said they would ATTEND IN THE FUTURE(92%の人がまた来たいという意志がある。)

他の情報も。

  • SPENDING TOP 5(お金を使った場所top5)
    1. Breweries/Bars $ 933,111(醸造所および併設のバー、約1億円)
    2. Restaurants $ 872,386(レストラン、約9300万円)
    3. Lodging $ 501,075(ロッジ、約5300万円)
    4. Retail $ 296,106(小売、約3100万円)
    5. Transportation $ 146,540(交通費、約1500万円)
  • その他にも
    wineries ($145,823)  ワイナリー
    gasoline ($93,494)  ガソリン
    airfare specific to the Sonoma County Airport ($72,795) ソノマカウンティからの飛行機代
    spa and personal care services ($38,273), スパなどケアサービス
    recreation and amusement activities ($37,462) レジャー関連
    travel and reservation services ($12,073) 旅行会社のサービス関連

※ 「醸造所があるカリフォルニア州から 83%」と言っても、南北に1000kmもあるカリフォルニアです。1000kmといえば、札幌〜東京くらいの距離。

これでもすごいと思うのですが、もっとすごいのはこちら。

  • LOCATIONS REPRESENTED UNITED STATES* 40 states | 418 cities(国内参加者は40州・418都市から来ているINTERNATIONAL* 11 countries | 15 foreign cities(外国からの参加者は11カ国、15都市から。ブラジル・カナダ・中国・デンマーク・日本・メキシコ・オランダ・ノルウェー・スペイン・スウェーデン・スイス)

ビールの発売という一大イベントに合わせて、何万もの人が動いています。地元はもちろん、アメリカ中から、そして外国からも。ビールが美味しいということが発展すると、こういう大きさにもなっていくのだと知り、私はワクワクします。ここを目指して多くのビールファンが集まることで、交通機関や飲食店、旅館業への需要が必然的に高まります。都市への経済効果、波及効果はとても高いのではないでしょうか。ついでに観光もするでしょうし、おみやげを買ったりもするでしょう。単にビールがいつも通りに売れるだけでは、醸造所と瓶の製造メーカーと配達業者くらいしか巻き込むことが出来ませんが、ビールに人を動かす力やクオリティがあればこんなムーブメントを生み出すことも出来るのですね。心の底からすごいと思うのです。

もう一点。上記で示した中に「92% said they would ATTEND IN THE FUTURE(92%の人がまた来たいという意志がある。)」というものがありました。単に珍しい限定ビールを求めるだけなら、「自分とビール」だけがあれば良いと思います。何ならインターネット通販で限定品を買えばいい。珍しさだけならそれで十分です。しかし、それでは二度目はないでしょう。ちゃんと美味しくないといけません。そして、実際は現場に「また来たい」と思わせる何かがビールの美味しさ以外の他の部分にもあって、それが9割以上のお客さんに伝わっているのではないかと想像します。雰囲気や空間。スタッフのホスピタリティ。ビールファンたちの熱気やらもきっとその一つでしょうね。統計に出てこないけれど、たぶんそういうものがある。

ビールを作るのも人だし、飲むのも人。そこにビールがあればコミュニケーションが生まれ、コミュニティが形成されるのではなかろうか。本質的には珍しいことや新しいことはそれに関係ないだろう。国境も人種も関係なく、クラフトビールは美味しいというだけで人を動かす。それは証明されたと思います。素敵なコミュニティを生むに値する、質の高いビールだけが欲しい。

それにしても、日本からpliny the youngerを飲みに行ったのは誰だろう?その方と是非一杯やりながらお話したい(笑)