“craft beer”と”クラフトビール” 醸造家やスタッフが自社株を持つこと
近年、大手ビール会社による買収が活発になっています。2015年でいうと、ハイネケンがラグニタスを、インベヴがゴールデンロードを買収する話が出ています。(インベヴがSABMillerを買収する話も・・・)株式が外部に公開されているとこういうことがすぐに起こるわけですが、それを防ぎながらモチベーションも上げるという好循環を生んでいる施策があります。
bizjournalの記事を見てみましょう。odell醸造所の例を挙げ、最近の大手による買収と自社株保有について語っています。
さらに詳しい記事もあるので、こちらもご覧ください。端的に表している部分を引用してみます。
The trick, however, is that three of the five largest craft breweries in this state are now governed by employee stock-ownership plans (or ESOPs) that give invested workers at the company the power to decide the breweries’ future rather than allow a small group of owners to sell or keep it.
employee stock-ownership plans (or ESOPs) とは「従業員による自社株の保有」を意味します。自社株を従業員が保持することで少数のオーナー・役員が独断で事業を売却するのを阻止しつつ、会社の方向性について従業員が積極的にコミットするようになるわけです。もちろん、儲かれば株主配当が保有者である従業員に渡ります。資金調達は株式公開よりも難しいでしょうが、その代わり従業員の士気が上がり、団結力も生まれるかもしれません。なかなかに良い施策ではないでしょうか。本文中にも挙げられていますが、New Belgian、Left Handがこの方法を採っています。
ちなみに、本文ではこの方法について若干否定的な立場の意見も紹介しています。
It’s not that craft breweries have no say over whether or not a giant competitor can purchase them. But brewing is a capital-intensive business, and smaller beer makers that seek to expand production and distribution especially often take on investors who control the majority of their company — and the decision about whether a multi-million-dollar offer from an international giant is the best way to recoup their investments.
確かにこれも分からなくもないです。資本主義社会であり、ビールも商品として流通する以上こういう立場もあるわけです。
とはいえ、私が評価したいのは「オーナーが自社株保有を容認している」ということ。それは「オーナーが経営者であるとともに醸造家であり、現場上がりで従業員を大事にしていること」だと思います。多くのクラフトブルワリーは小さな機材で商業醸造をスタートさせました。だんだんとその規模を大きくしていったわけですが、オーナーは経営者としてだけでなく醸造家としても立ち上げからの苦労を知っています。従業員は苦楽を共にした家族でもあるわけです。従業員が自社株を持つということ、それは自分が家族の一員として家族を守るという決意を表すのかもしれません。
大げさかもしれませんが、クラフトビールとは仕事であり、生き方であり、人生そのもの。そして、コミュニティを生み出し、コミュニティを繋ぐもの。そんな気がしてきます。