事態を冷静に把握しようとしているアメリカに思う

世界中が新型コロナウイルスの影響を受けています。イタリアをはじめとする欧州各国では飲食店の強制的な営業停止が行われていますし、アメリカのブルーパブでもその場では飲めずに瓶や缶の持ち帰りだけという形にして営業を縮小しているところもあります。屋内待機となっているために出勤出来ないので稼働を止めているブルワリーもあるそうです。たとえば、べルギー・ブリュッセルの中心地にあるカンティヨンもブルワリーの見学ツアーは中止となり、持ち帰りビールの販売だけになったことを発表しました。

外出の制限だけでなく、渡航制限も始まっています。世界全体で同時にこういう事が起こっていると考えるとゾッとしますし、いつ終わるのかが分からないからこそますます恐怖を感じます。いつになったら落ち着くのだろうか。

ところで、最近私の会社にファクタリング関係のDMがたくさん来るようになりました。ファクタリングは平たく言うと、商品・サービスの提供は終わっているけれど入金はまだ先の場合、手数料を引かれるのでちょっと割安にはなってしまいますがすぐに現金化しますというサービスです。債権の売却をしませんか?というわけです。私自身全く興味がないので使うつもりは全くありませんが、これも世の中の情勢を反映したものなのだろうと考え込んでしまいます。

仕入れのサイクルとして、仕入れた当月末に締めて翌月末に支払いというパターンはよくあります。支払いサイトが60日ということになりますが、入金がかなり後なので今の情勢ではキャッシュがキツい。黒字倒産の危険性が高まるということです。ここで手持ちの現金が切れると倒産してしまいますから、何としてでも回避せねばなりません。そういう需要を見越して上記のようにファクタリングに関する案内がたくさん届くのだろうと予想します。

・・・となると、世間はかなりしんどいのか?ぶっちゃけヤバいってこと??

などと悪い方に考えたくなりがちですが、そこは冷静にいようと心掛けています。みなさんも落ち着いて行動し、いつも通りに生活しましょう。

さて、ウイルスの影響でクラフトビール産業はどうなっていて、これからどうなるのか?ということに関して興味深いデータが出てきています。アメリカのBrewers AssociationのエコノミストであるBart Watson氏からこのようなツイートが出ていますのでご覧ください。新型コロナウイルスの影響によるアメリカのクラフトビール産業に対するインパクトを短期、長期に分けて考察しています。

より実態を把握するために、氏はアンケートも実施しています。追って詳細な状況報告があるでしょう。

最初のツイートでも使われていますが、opentable.comとい世界中に展開しているオンラインレストラン予約サイトがデータを公開しています。ここ数ヶ月の飲食店の状況を国、地域、都市ごとに分けて数値を出していて、これまでの推移が確認できます。

OpenTable Restaurant Performance Data(google spread sheet)

確かに世界各国、各地域は悲惨な状況で大きな流れは個々人にはどうしようもないことなのですが、こういう数字が見えると現状を把握して身構えることは出来るのではないかと思うのです。しかしながら、残念なことにOpenTableから提供されたデータには日本は含まれていません。

日本のビール産業に関わる団体からも分かる範囲で構わないので出して欲しいです。ぐるなびや食べログのようなサービスにこういうデータがあれば差し支えない範囲で公開して頂けないでしょうか?また、フードリンクや柴田書店などをはじめとする外食系媒体も何かしらデータを持っていたら広く共有して頂けたらと思います。飲食店関係の方、ブルワリーをはじめとするメーカー、そしてその他関連産業の方が自身のいる地域、業種がどうなっているかを理解出来ると次に打つべき手が見えてくるように思うのです。是非お願い致します。

蛇足ではありますが、最後に一点だけ。拙著「クラフトビールの今とこれからを真面目に考える本」で詳しく指摘しましたが、情緒に偏らずに統計的クラフトビールを定義しておくことは極めて重要かと思います。こういう時にも定義が役に立つし、冷静にマーケットを見ることが出来ると考えるからです。動きの早いアメリカを見ていて、その思いを新たにするのです。