オレゴンのブルワリーで働く日本人、立花薫

立花薫という若者がいる。

彼と会ったのは2019年のhood to fujiの会場でした。ブルワーになるべくアメリカで醸造学を学んでいる人がいることは以前から聞いていて、共通の知人を介して紹介して頂きました。その日会場を後にしてからも一緒に随分飲んで色々な話をしました。そう言えば、あの時は金髪に染めていて結構やんちゃな感じでしたね(笑)そういうところも含めて良い思い出です。

 

彼のことを詳しく紹介しておきましょう。

立花薫(たちばなかおる)
1996年生まれ。大阪出身。地元の公立高校を卒業後、ボストンの大学へ入学するに当たって渡米。2年後、醸造を学ぶためにコロラド州立大学へ編入。卒業直前には元ニューベルジャンブルーイング醸造責任者の下でインターン。卒業後2020年1月からはオレゴン州アストリアのフォートジョージブルワリーに勤務。instagram→ astoria_japan  twitter→@brewer_kaoru

私はずっと前から現役でアメリカンクラフトビールシーンで働いている方に現状どうなっているのか?今何を考えているのか?などを聞いてみたかったのですが、なかなかその機会に恵まれませんでした。メールで質問しても空気感や熱量がなかなか伝わらないし、こちらも受け取れない。しかし、現役バリバリの日本人がいると知って「彼に聞くしかない!」と思って電話してしまったのでした。(聞きたいことがありすぎて、あの時長電話してしまってごめんなさい。)

彼もフルタイムで働いていますし、日本とアメリカでは時差もあるので今後不定期に彼へのインタビューを掲載したいと思いますが、今回最初の長電話の時の話を記録しておこうと思います。

①なぜ日本国内で進学せずにアメリカに渡ったのですか?

父親の仕事の関係で、母弟を日本においてアメリカで小学4年の1年間二人暮らしをしたのが僕のアメリカとの出会いでした。日本語0の現地の小学校に通っていて、泣いたことも多くかなり大変だったのですが、10歳の僕は知らず知らずのうちにアメリカの多様性や自由さ、明るさと言ったところの虜になっていたようです。
帰国後、いつかはまたアメリカに行きたいとずっと考えていたのを実現させられることになったのが大学進学でした。

②最初の大学はボストンですが、そこでは醸造学を専攻したのですか?

ボストンではコミュニティカレッジという2年制の短大のような学校に通い、一般教養科目(理系)を中心に履修していました。コミュニティカレッジ生の大半は卒業後に4年制の総合大学の3年次に編入するというのが一般的で、僕も当初からその予定でした。

③醸造学を学ぶ上でコロラド州立大学を選んだ理由は?

編入先の総合大学では日本でいう理学部生物学科のようなところで酵母や発酵の勉強ができればなと考えていたのですが、あるネット記事を見つけ、コロラド州立大学(Colorado State University、以下CSU)のFermentation Science and Technology Major(発酵科学&技術専攻)を知りました。
これは大学の近くにあるニューベルジャンブルーイングやAB Inbev(アンハイザー・ブッシュ・インベブ)からの出資で2013年夏に設立されたばかりのビール醸造を学べる新しい専攻コースです。他にも似たようなプログラムを持つ大学は全米に2、3校あるのですが、一度編入前にCSUを訪問した時のキャンパスと街の雰囲気の良さ、そして新しい専攻だからこそいろいろ挑戦できるのではないかという点からCSUに編入することを決めました。

④CSUでの同級生はどんな人たちでしたか?

特殊な専攻の特性上、一年生からこの専攻ではなく2、3年生でこの専攻に変更してきた子や、20代後半以上の友達も多かったです。
そもそもアメリカの大学は米軍に数年従事してから大学に来るような人も多いので、日本より学生の平均年齢は圧倒的に高いのですが、僕の専攻はその中でも特に高く20歳代前半の学生は半分以下でした。
一番仲の良かった友達たちも20代後半や30代半ば、40代の友達もいました。
就職先はもちろんクラフトブルワリー(ブルワー、セラー担当者、QA lab等)が多いですが、アメリカ国内の大手やクラフト日本酒醸造所といった変わったところもありました。ある子は田舎で父親とウィスキーの蒸留所を開くそうです。
※QAとはQuality Assuranceの略で、微生物検査などを行う品質管理部門のこと

⑤個人的に好きなビールやブルワリーのことを教えてください

最近はもっぱらサワーとラガーが大好きです。
デンバーにBierstadt Lagerhaus といういかにもといった感じの名前をしたドイツ系ラガーを作るブルワリーがあり、よくそこのヘレスを飲んでいました。サワーはバレルでサワーリングをするものをインターン先で学び、惹かれました。

⑥ビールに目覚めたきっかけは?

普段から両親はよくビールを飲むのですが、その中でもあるときに母親がよく買ってきていたベルギービールのことをよく覚えています。 中学生ぐらいだった僕は飲むことに全く興味はなかったですが、なんだかいつもの黄色いのとは違うなー、なんだかおもしろい瓶だなーと思った記憶があります。
もともと食が大好きで、その中で発酵食品というものにも出会いました。実家では毎年かぶらずしを漬けていますし、まぁ、元々はお酒よりも食品の発酵の方に興味があったのです。
初めてのクラフトビールとの出会いは漫画です。 今では一番大好きな漫画「もやしもん」を何もわからずに小中学生の頃にで読んでいたのがきっかけかもしれません。 高校生の頃、ふと気になってビール入門の本を買ったりもしました。(州法により飲酒年齢が21歳以上とされているので)渡米後ボストンでは21歳になるまでの2年間飲めずに過ごしましたが、19歳の夏にビールが飲みたすぎてヨーロッパに2ヶ月のビールを飲むためにバックパッカーになりました。
※欧州では16歳から飲酒可能な国もあり、18歳以上であれば間違いなく合法。

話は尽きないのですが、今日はここまで。ということで、近々また長電話しながら向こうのことを根掘り葉掘り聞こうと思います。乞うご期待!!