定番ビール、ありますか?

今日のトピックは「定番ビール、ありますか?」としましたが、「タップのラインナップをどうするか?」ということについてです。BAから非常に興味深いデータが出ているのでまず初めにご紹介します。

https://www.brewersassociation.org/news/build-a-better-beer-list-to-rotate-or-not-to-rotate/

クラフトビールをドラフトで提供しているお店にはいくつもタップ(ビールの注ぎ口)があるわけですが、それをどのようにマネジメントしていくべきか?という大きな問題があります。来店するお客様に「いつも初めての出逢いがある」という提案をする為に毎回繋ぐ銘柄を変えるのも良いですし、「あそこにいけばいつもアレがある」という安心感を持って頂く為に定番を使い続けるのも1つの方法ですね。前者をゲスト枠、後者を定番枠とすると、その使い分けについてどうするのが良いのでしょうか?その1つの答えがこれです。

While customers come to retail establishments for various occasions, a Nielsen/CGA survey of 5,000+ on-premises consumers found that 69% preferred roughly the same number of rotating and standard taps. That means that for many accounts, balance will be key.
ニールセンが5000人以上の外飲み客を調査したところ、69%の人はゲスト枠・定番枠は半分ずつが良いとしていると判明。バランスが鍵である事を示している。

人間というものは慣れているものに対しては安心感を持つものです。定番があることはとても大事なことでしょう。とはいえ、定番だけだとマンネリ化しやすく、飽きられてしまうことも。お店の地域や客層にも依るので一概には言えないかもしれませんが、一定程度定番化したものが必要ではないかとCRAFT DRINKSは考えます。上記のように半分ずつが妥当なのかは定かではありませんが、定番がゼロというのは良くない気がします。

たとえば、ゲスト枠だけで運営したらどうなるか?これについてちょっと思考実験してみましょう。

あなたはビアパブのオーナーです。お店のラインナップを全てゲスト枠で運営しているとします。ナイスな銘柄を毎回繋ぎ、お客様にも好評です。しかし、近所に似たような業態のお店がニューオープン。ビールは全てゲスト枠でラインナップも結構似ている。加えて、自分のお店よりも価格が安い。こういう状況になった場合、どうするべきか?

自店の方針を変えないのであればよりお客様に求められるもの、わざわざ飲みに行きたくなるものを繋ぐために仕入れを頑張ることになります。限定品やレアものだと良いですが、人気ブルワリーの限定品はそう簡単には手に入りません。言ってしまえば「コネ勝負」みたいなもので、後発だと分が悪いのは明白です。仕入能力が高いお店が近隣に出来た場合、ドラフトビールのラインナップだけを比較するとすぐにひっくり返される可能性が高いように思います。たとえばブルワリーの直営店が近所に出来たらなおさらですね。別の方策を考える必要があるでしょう。

さて、冒頭でご紹介した文章にこんなことも書いてあります。参考になると思いますので、是非お目通しください。

5 Facts about Tap Selection
Consumers’ most preferred setup is one to 10 tap lines of both fixed and rotating.
消費者の好みとして、ゲスト・定番合わせて1〜10タップあるのが最も良い
Quality is more important than price in driving the decision to drink craft (44% versus 33%; Nielsen/CGA).
ニールセンの調査によると、クラフトビールを飲む場合、意思決定において価格よりも品質の方が重要
Once a consumer has decided on craft, quality of product (59%), style (48%), and brand reputation (31%) are the three most important influencers in brand choice for craft beer drinkers (Nielsen/CGA).
ニールセンによると、クラフトビールを飲む人がブランドを選ぶ際、ビールの品質(59%)、ビアスタイル(48%)、ブランドの評判(31%)が最も重要
71% of consumers know which drink category they will choose before entering the account. Of those customers, 57% will stick to their favorite brands. For those without a drink category preference, price is the No. 1 purchase driver, with 43% of those who don’t know which category they will drink saying price is their decider (Nielsen/CGA).
消費者の71%は来店前にどういうものを飲もうか決めています。その57%はお気に入りのブランドがあります。好きな飲み物のカテゴリーが無い消費者にとっては価格が購買を決定する一番の要因で、どういうものを飲もうか分からない人の43%がそう答えています。
Trial declines with age. Too many choices and a lack of consistent offerings can discourage older consumers.
年齢と共に試してみようという気持ちは減っていきます。多すぎる選択肢や一貫性のないラインナップは高齢の消費者をうんざりさせます。

What Should Your Beer List Look Like?
Today’s consumer clearly likes variety, but too many choices can result in confusion and reduced sales. While research shows variety has grown in importance, having a combination (or limited number) of rotating taps, with a consistent mix of quality brands people want, will likely lead to stronger sales and happier, more regular customers. Not all accounts are the same, though; ultimately, you are the best judge of your clientele.
今日の消費者は明らかにバラエティを好みますが、選択肢が多すぎると混乱させてしまい売上の減少を招く可能性があります。バラエティの重要性が増してきていることは調査で明らかになっている一方で、顧客の求める品質のブランドを絡めつつゲスト枠を回していくことで売上の向上が望めますし、顧客も幸せになり常連化していくでしょう。全てのお店が同じではありませんが、あなた自身が顧客のことを判断出来る最良の人であるのは間違いありません。

CRAFT DRINKSとしてはタップの数よりクオリティを重要視しています。現在の日本では世界中のクラフトビールが流通していて最先端のものを追いかけることも出来ますが、質の良い定番をちゃんと語り届けていくことがクラフトビールを文化へと昇華させる為に最も必要なことではないかと思います。多様性は土台となる定番、スタンダードの品質の上に成り立つはずですから。流行には必ず過去との繋がりがあり、その文脈を語ることがこれからとても重要になると思います。