気持よくホームランを打たせてくれるバッティングピッチャー
私は酸味には強いようなのですが、辛いものには滅法弱い。真っ赤な担々麺や麻婆豆腐には相当苦しめられてきました。もはやトラウマです。また、お酒をこよなく愛していますが、根っからの甘党です。世間には甘いものが苦手なお酒好きの方も多いですが、私の場合全く逆です。お菓子は本当に大好きで、パティスリーのはしごもよくします。「甘さ控えめのスイーツなんて求めてないんですよ、世の中から無くなればいいのに、甘いからスイーツなんですよ!」と結構本気で思ったり(笑)
さて、世間一般から見て私が好きなお菓子はおそらくかなり甘くて濃い味がすると思います。「おそらく」とか「・・・と思います」という言い回ししか出来ないのは人それぞれ受け取り方が違うからです。ストライクゾーンの違いといいますか、程度や度合いが違うのです。誰かが「ストライク」と感じても私は「ボール」と思うかもしれません。およそ感覚というものは100%そのまま言葉には置き換えられないものです。
私たちは言葉で近似値をはかりながら生きているのですね。誰かと共有出来ているつもりでも、そうでないこともたくさんあります。それでも生きていかねばならないわけですから、できるだけ「精度の高い近似値」を共有したいなぁと思います。
口にするものに関して言えば「一緒に試せば良い」とシンプルに思います。同じ場所で同じものを同じタイミングで飲んだり食べたりすれば、その人と自分のストライクゾーンの違いが分かります。言葉にしなくても、雰囲気や表情などでも十分伝わってくるでしょう。「同じ釜の飯を食った仲間」とはよく言ったものです。
最近ビールの説明に「IBU」という苦味を表す数値が記載されることも多くなりました。IBUは目安であって、体調や気分、飲む順番などで感じ方は変わってきます。メニューにある説明書きがそのまま自分に当てはまるとも限りません。なかなか難しい問題で、「そこそこ苦くて美味しいのが飲みたかったのに、全然違った・・・」という経験のある方も多いのではないでしょうか。
私は信頼している馴染みのお店で飲む時にはあまりメニューを見ません。「2、3杯飲むけど、最初は苦くない軽めので。今日、何かある?」こんな感じでものすごく適当にお願いします。でも、その結果、大外れはほとんどしません。ものすごい高打率で安心感があります。嬉しい限りです。自分と馬が合う、つまり「精度の高い近似値」を共有してくれるお店は本当に素晴らしい。いうなれば、気持よくホームランを打たせてくれるバッティングピッチャーのようです。そういうホームスタジアムのような、自分にとってなくてはならない場所がパブなのだろうなぁ、と最近思うようになりました。