2017年一番読まれたもののまとめと2018年の予想

昨年は大変多くの方にご拝読賜り、誠にありがとうございました。本年もご愛顧賜りますよう、どうぞよろしくお願い致します。

さて、2017年も終わり、2018年が始まりました。毎年感じることですが、一年が過ぎるのは本当に早いものです。クラフトビールは四季醸造出来ますし海外からどんどん新しいものが入ってくるのでシーンの変化はとても速いと感じます。ほんの数年前とは全く状況は違いますし、恐らく今年2018年もまた変化し続けていくでしょう。今日は2017年にたくさん読まれたものをまとめて昨年クラフトビールファンの皆様が注目してきたものを振り返っておきたいと思います。

2017年トップ10はこちら。

ホームタップとそのインパクトについて
【プロ向け】キーケグ大解説
IPAカスクフィニッシュウイスキー登場!! 2017.10.2追記あり
タップマルシェとその意図
NEW ENGLAND IPAを知るなら、これを読みなさい!
ビール職人になるにはどうしたらいいの?
New England IPAの勉強会に参加しました
【要ブックマーク】ビール樽の種類を押さえておこう② ※2017.6.15追記あり
渋いIPAの話

IPA関連が多いですね。また、タップマルシェやホームタップなどのハードウェアにも関心があるようです。IPAも、ハードウェアも今後ますます進化を遂げると思います。その情報は随時アップして参りますので、ご覧くださいませ。

さて、2018年の日本のクラフトビールシーンはどうなっていくのでしょうか?CRAFT DRINKSなりに予想してみたいと思います。もちろん異論や反論はあるでしょうが、それについては皆さまと今後是非議論したいと思っています。

IPA人気、特にNew England Style IPAへの注目はまだまだ続く

世界の動向を見ても恐らくこれは間違いないでしょう。大手も発売するようになりIPAが市民権を得てきています。「クラフトビール=IPA」というような認識も広がってくるのではないでしょうか。また一段とクラフトビールは広がりを見せると思います。
さて、New England Style IPAについてです。皆さんこの手のビールを欲しがるわけですが、NEIPAによく使われるホップの値上がりや入手困難な状況は続いていて劇的な改善は見込めません。国内産のNEIPAにおける需給ギャップがますます強くなるでしょう。その分、ビールインポーターがこのスタイルのものを今以上にガンガン輸入してくることになるでしょうから、銘柄を問わなければ一年中何かしら手に入るようになると予想しています。とはいえ、SNSなどのお陰で美味しかったものの評判はすぐに日本中に広がる状況ですからNEIPAであるだけでは最早訴求力は強くはなくなります。「状態の良い、美味しいNEIPA」が名指しで評価される時代が到来することでしょう。「旨いは正義」を地で行くことになるわけです。

2018年は地方都市での高級ビール元年に

2017年、キリンビールがタップマルシェを関東近県のみに導入し、一定の成功を収めました。そして、2018年に5000軒を目標に展開することを既に発表しています。他の大手がそれを黙ってみているはずがありません。独自規格のハードウェアを開発するかどうかは別として、何かしら「高級レンジのビール」を広めるための施策を打ってくるでしょう。例えばウルケルやグロールシュなど買収した欧州ブランドを最高級レンジ商品と位置づけて今月からアサヒビールが販売することが決定しています。国産、輸入を問わず今までよりも高級レンジのものが多くの人に情報とともに露出することになり、地方でもクラフトビールがもっと広く知られるようになるでしょう。それは全国のクラフトブルワリーにとっては追い風でもありますが、依然として存在する価格ギャップを埋めるだけのクオリティや語りかけが出来ないと空振りに終わってしまいます。

ビール祭りの淘汰

現在相当な数のビール祭りやクラフトビール関連イベントが全国で開催されていますが、色々な面でそろそろ飽和しているのではないかと感じています。小規模ブルワリーが圧倒的に多いのでイベントを同じ日に掛け持ちすることは出来ません。今まではイベントを主催する側が出店者であるブルワリーを呼んでいましたが、これからはブルワリー側が出るイベントを選ぶフェーズになると思います。強いイベントのコンテンツ・集客力は更に強くなり、弱いイベントは出店者も集まらず、集客もできずに運営がままならなくなるでしょう。消費者の間でもビール祭りというコンテンツは一周したと感じていると思います。今まで通りでは現状維持すら難しいであろうと考えます。家でもお店でもない場所でビールを飲むだけのイベントは早晩死期を迎え、「クラフトビール × ◯◯◯」のような切り口だったり、エッジの効いたブルワリーとビールが濃いコンセプトの元に集まるメッセージ性の強いイベントが必要になるでしょう。

缶と瓶とケグの話

家庭用・業務用という分け方をした場合、今年規模を拡大しようと思っているブルワリーが取り組むべきは家庭用の缶と瓶でしょう。クラフトビールの認知拡大にタップ数の増加が全く追いついていないので、業務用は椅子取りゲームの様相を呈しています。プレーヤー、つまりブルワリーの増加に対してビアパブがそれほど増えていないとも言えます。特に地方でその傾向は顕著で、ケグだけだとジリ貧ではないかと思います。大手が缶と瓶でクラフトカテゴリーに商品を投入し続けており、コンビニや酒販店も店頭の棚を割くようになっています。マーケットボリュームは家庭用で伸びてくるのがセオリーで、充填ラインを持っているブルワリーへのOEMなども視野にいれるべきだと考えます。

「開業ゴール」問題

来年6月のビールおよび発泡酒の酒造免許に関する改正を前にブルワリーの開業ラッシュが続いています。その流れを見ていて思うのは「改正に間に合わせることが目的になっているように見える方々が少なからずいらっしゃる」ということ。美味しいビールを醸造し販売して行くことが目的であるブルワリー運営のはずなのに「資金・設備・技術・経験の足りないままの開業」になってしまっては本末転倒です。非常に危険。上場ゴールならぬ、開業ゴールがこれから間違いなく幾つも出てきます。90年代に始まった地ビールブームの終焉をまた想起させる事態になりませんように、と心から願います。