渋いIPAの話

May 24, 2017

BAのマニュアルには「1インチの泡は見た目、適度なガス抜きうんぬん、、、」などと書いてあります。概ね同意なのですが、CRAFT DRINKSは「場合に依る」と声を大にして言いたいと思います。

先日お邪魔したとあるお店はどんなビールでも指2本分の泡をつけて提供していました。注文したのはアメリカのIPAだったのですが、まぁとにかく渋くて渋くて飲めたものではないのです。一緒にいた関係者にもそれを飲んでもらい、この指摘が間違っていないことを確認しました。メニューでは「しっかりした苦味ながら、トロピカルで軽やか」なんて書いてあったのに渋さばかりが目立って一つもそんなニュアンスが感じられないわけなのです。

そこで私はおかわりに同じものを注文しました。「グラスをリンスしてから泡無しで注いでください」と付け加えて。しばらくして私の前に届いたIPAは渋さも押さえられ、アロマもメニューに近いものがちゃんと感じられました。隣にいた仲間達も納得の様子で嬉しかったことを憶えています。タップの頭の部分を捨てずに乾いたグラスへ直接注いだからこうなったのであり、リンスしたグラスに頭の部分を少々捨ててから静かに注げばこうはならなかったわけです。

CRAFT DRINKSとしてここで強調したいのは、「ホッピーなビールの場合、余計な泡は苦味と渋みを増幅させる」ということ。苦味は良いのですが、渋みが強くなってはイガイガしてしまって美味しくないと思うのです。グラスが汚れていたり、やたらに高いところからサービングして余計な泡がたくさん出ることでホップの渋みを強調してしまってはせっかくの美味しさが半減してしまいます。お酒の個性を読み切って必要十分なサービングをするべきですから、意図しない余計な泡によってそれが左右されないようにして頂きたいと思います。

前述の通り、場合によっては「完全に泡なし」で注いだ方が良いこともあるでしょう。逆に泡がたっぷりないと美味しくない場合もあると思います。例えば、フラットに注いだベルジャントリプルなどはがっかりです。多くのクラシックなトリプルは酵母由来の香味を存分に味わってこそだと思うので、1インチと言わず、もっとガンガン立てても良いはずです。

「泡とビールが7:3」は見た目に美しいかもしれませんが、美味しいとは限りません。CRAFT DRINKSは美味しいことを最優先するので、ここには全くこだわらないのです。グラス選びや温度、サーバーのセッティングなど細部の調整を徹底し、提供側が絶対的な自信を持つ形で提供して頂きたいと思っています。

美味しいという感覚は十人十色で、正解は無いかもしれません。しかしながら、「お店側が考える正解の形を提案すること」は可能だと思います。そのうえで、本当はフラットで注いだ方がバランスが良くて美味しいけれど、がっつり苦いものがお好みの方にはしっかり泡を立ててご提供した方が良いかもしれません。きっとこの部分はオーダーを受ける時の質問力と共感力に依存するのだと思います。実力のあるお店はこういう空気を読むのが本当に上手なのだといつも感心します。

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