ドラフトビールを最高の状態で出す10のコツ⑨オフフレーバーのトラブルシューティング

数年前とは全く様相が異なり、クラフトビールという存在が大分認知されてきたと思います。大都市のみならず、今後ますます多くの人に知られていくでしょう。その時、単にケグを仕入れて提供すれば良いのではなく、「飲み手の感動体験につながる良い状態で提供すること」が重要になってくることでしょう。美味しく提供する為にすべきことについてBAがヒントを10個挙げていますので、一つずつ見ていきたいと思います。

前回までの内容は以下です。こちらも是非お目通しください。

ドラフトビールを最高の状態で出す10のコツ
ドラフトビールを最高の状態で出す10のコツ①温度
ドラフトビールを最高の状態で出す10のコツ②ビールホース
ドラフトビールを最高の状態で出す10のコツ③ケグの賞味期限
ドラフトビールを最高の状態で出す10のコツ④適切なガス
ドラフトビールを最高の状態で出す10のコツ⑤正しい組み合わせ、グラス選び
ドラフトビールを最高の状態で出す10のコツ⑥清潔なグラス
ドラフトビールを最高の状態で出す10のコツ⑦グラスの温度
ドラフトビールを最高の状態で出す10のコツ⑧サービングテクニック

今日は10番目の「オフフレーバーのトラブルシューティング」について。上記リンクから原文を引用し、ざっくりとですが訳をつけておきます。

10. Troubleshoot Off Flavors that Can Negatively Impact Repeat Business and Potential Sales
When not intentional by the brewer for a specific brand or style, Pediococcus and Lactobacillus may occur from unhygienic conditions in draught beer systems. These bacteria most likely develop when lines are not properly maintained and cleaned, resulting in the following off flavors:
・Diacetyl: buttery, buttered popcorn, butterscotch
・Lactic Acid: sour, sour milk, acidic

Acetobactor will begin growth in dirty drains, spill trays and used bar rags, eventually spreading to beer faucets and accelerating when serving staff submerge faucets into the beer being poured, resulting in:
・Acetic Acid: sour, vinegar

Remember: All beer is perishable. Time, warner temperatures, and direct exposure to oxygen will diminish beer’s positive attributes and are all causes of:
・Oxidation: papery, cardboard, bready, vegetal

10.顧客のリピートや見込み売上減少を招くオフフレーバーのトラブルシューティング
醸造家の意図しないトラブルが発生することがあります。ペディオコッカスやラクトバチルスが不衛生なドラフトシステムによって発生したりするのです。ホースが適切に扱われず、洗浄もされていないとこのようなバクテリアが発生し、その結果下記のような症状になります。
ダイアセチル:バター、バター風味のポップコーン、バタースコッチ
乳酸:酸味、酸っぱいミルク、酸性のニュアンス

アセトバクターは汚れた排水設備、こぼしたビールのトレイ、バーのラグ等で繁殖し、時によってはビアタップにまで広がってサービングスタッフがタップを注いでいるビールに接触させると症状が悪化します。その結果、下記のようなことになります。
酢酸:酸味、お酢のような

忘れないよう注意しましょう:ビールは例外なく繊細で傷みやすいものです。時間、高温、酸素に直接触れる環境ではビールの良い点が損なわれ、下記を引き起こします。
酸化:ボール紙、ダンボール、パン、野菜の風味

ペディオコッカスやラクトバチルスという聞き慣れない言葉が出てきますが、ここで言われているのは「きれいにしておかないと良くないフレーバーがビールに出てしまいますよ。」ということ。そして、その発生場所と原因、その結果をまとめているわけです。ここでは長くなるのでオフフレーバーには触れませんが、オフフレーバーを知ることはとても重要です。オフフレーバーの勉強会などは定期的に受けて、ニュアンスを確認するのも大事だと思います。

ちなみに、汚染だけではなく醸造過程や原料由来でオフフレーバーが生じる場合も多々あります。BJCPなどのスタイルガイドを是非一度お目通しください。各スタイルに関するオフフレーバーおよびその評価について記述があります。たとえば、アメリカンライトラガーの場合はこうです。

Aroma:
Low to no malt aroma, although it can be perceived as grainy, sweet, or corn-like if present. Hop aroma is light to none, with a spicy or floral hop character if present. While a clean fermentation character is desirable, a light amount of yeast character (particularly a light apple fruitiness) is not a fault. Light DMS is not a fault.

「あったとしたならば」、「軽い場合は好ましい」など制限付きでOKだったりします。他にも「あってはならない」など色々な表現がありますので、是非読んでください。人間の感覚なので多少幅はあるでしょうが、フレーバーとその名前を一致させて感覚と言語を統一することも大事でしょう。

お店の方は日々テイスティングなさっていると思いますので、ちょっと変わったことがあればピンと来ると思います。その微妙な違和感が結構重要ではないかとCRAFT DRINKSでは考えています。恐らく一般の飲み手も専門知識は無くとも不快な要素については感覚的に拾っています。ただ、それを上手に表現する言葉が見当たらなくて、伝えられないだけなのかもしれません。「んー、飲み進まないねぇ」という小さな呟きや曇った表情からお店側が積極的に感じ取らねばならないのかもしれませんね。引用部分のタイトルの通り、「顧客のリピートや見込み売上減少を招く」に違いありませんから。