ドラフトビールを最高の状態で出す10のコツ⑦グラスの温度
数年前とは全く様相が異なり、クラフトビールという存在が大分認知されてきたと思います。大都市のみならず、今後ますます多くの人に知られていくでしょう。その時、単にケグを仕入れて提供すれば良いのではなく、「飲み手の感動体験につながる良い状態で提供すること」が重要になってくることでしょう。美味しく提供する為にすべきことについてBAがヒントを10個挙げていますので、一つずつ見ていきたいと思います。
前回までの内容は以下です。こちらも是非お目通しください。
ドラフトビールを最高の状態で出す10のコツ
ドラフトビールを最高の状態で出す10のコツ①温度
ドラフトビールを最高の状態で出す10のコツ②ビールホース
ドラフトビールを最高の状態で出す10のコツ③ケグの賞味期限
ドラフトビールを最高の状態で出す10のコツ④適切なガス
ドラフトビールを最高の状態で出す10のコツ⑤正しい組み合わせ、グラス選び
ドラフトビールを最高の状態で出す10のコツ⑥清潔なグラス
今日は8つ目の「グラスの温度」について。上記リンクから原文を引用し、ざっくりとですが訳をつけておきます。
8. Temperature of Glassware
Room temperature glasses are preferred for craft beer to enhance flavor and aroma. Domestic lagers can be enjoyed in chilled glasses, however the glass should be dry prior to chilling to avoid foaming when the beer is introduced to the glass. Frosted glasses contribute to a flavor-blinding yet more filling experience—not conducive to a second round!
8. グラスの温度
香りや味わいを増幅してくれるので、クラフトビールには室温のグラスが望ましい。国産ラガーは冷やしたグラスで愉しむことも出来るけれども、注いだ時に泡立つのを避けるため冷蔵・冷凍せずに乾かしておくべきです。霜のついた状態のグラスは味わいをぼかしてしまい、おかわりには繋がらない。
グラスを食器洗浄機で洗うこともあると思います。熱いお湯で洗浄するのできれいになり、清潔さの点では良いです。しかし、グラスが熱いと注いだビールも温まってしまいます。必ず室温以下になるようにしましょう。上記で指摘されているように、グラスを冷蔵・冷凍するとグラス表面に霜がつき、それが余計な泡を呼ぶことになるのでやめましょう。液体の温度が低すぎると香りが立たず、味わいものっぺりします。一杯の満足感が下がると思われますので避けるべきです。
さて、ここまではよくある説明です。CRAFT DRINKSではもう少し踏み込んで考えてみたいと思います。
私はお酒に関しては極めて雑食で、ウイスキーやカクテルがメインのオーセンティックバーも大好きです。カクテルグラスに注ぐショートカクテルの場合、注ぐまでグラスに氷を入れて冷やしておくことが多いです。(冷蔵庫に入れるお店も勿論ありますが、冷蔵庫の匂いがつくのを嫌って常温で棚に置くのを良しとするお店も多いです。)グラスの温度が低い、つまり注いでからの液体の温度上昇が遅いということですから、「室温に注いだ場合より、適した温度が長続きする」ということになります。美味しい温度帯で長く愉しめるように、という心遣いを感じますね。
これをクラフトビールに応用してみませんか?リンサーは何分も使わないとグラスの冷却には効果がありません。ざっと水で流すことが目的ですから仕方ないのです。そこで、是非1つバケツをご用意ください。氷水を張りましょう。ベルジャンホワイトやバイツェンなど低めの温度が美味しい液種のグラスを氷水でしっかり冷やしてから注ぐと温度上昇が遅くなって美味しい状態が長続きします。リンサーのないお店はバケツを2つにして、もう1つを常温の水を張ったものにしましょう。グラスを潜らせるだけでリンサーと同じ効果になります。
オペレーションが煩雑になったり、忙しい時間には対応するのが大変かもしれませんが、顧客満足度の向上には貢献すると思います。そして、是非この取組をメニューやPOPにしてお客様に伝えてください。プロの仕事には必ず意味があり、その意味を分かりやすい言葉で伝えることもプロの大事な仕事の1つではないかと思うのです。