「ビールを通じて地域を元気に」という言葉

「ビールを通じて地域を元気に」みたいなフレーズをよく見ますよね。地方の人口は減ってきているし、商店街はシャッターだらけだと聞きます。地域の活性化のコンテンツとしてクラフトビールがきっと役に立つと思います。外国ではBeer Tourismなどと言ってビール目当ての観光客の誘致で一定の成果を上げているところもありますから、日本でもやり方を間違えなければ不可能ではないだろうと考えます。たとえばブルーパブが出来て「ビールって美味しいね」とか「ビールって楽しいな」と思う方が多くなり、実際に笑顔が増えていくのは素敵だなぁと心の底から思います。

・・・あれ?とふと思ったのです。

「何がどこまでどうなったら」元気になったと言えるのだろう?Key Goal Indicator(いわゆるKGI、重要目標達成指標)をどう設定しているのだろう?

情緒的な部分を否定するわけではないのですが、素直にそこのところを訊いてみたいなぁと思うのです。

ビールに関する諸外国の状況を調べていると必ずと言って良いほどビールの生産量以外の数字がセットになっていて、たくさん出てきます。たとえば、雇用者数、納めた税金の額、売上高などなど。アメリカだと最低でも州単位でこういうデータが取れます。地域の内需ではなく地域外からの訪問者による売上や州をまたいだ販売によってどれだけ当該地域にプラスが生まれたかを追うことが出来る状況です。そのおかげで毎年「XXX人雇用が増えました!」とか「平均XXX円収入が増えています!」という発表があるのです。こういう仕組みがあるのは非常に良いことだと思います。

こういう数字があることによる恩恵はたくさんあるでしょう。個別の企業の視点でも有効で、これらの数字を元に今までの施策が良かったのか悪かったのかについて振り返ることが出来ます。そして、今後どう施策を打っていくかを実際のデータから検討することも可能です。広告宣伝の予算配分の根拠になったり、オンプレミスとオフプレミスどちらに注力すべきかなども判断する材料になるでしょう。これらが多数の企業で行われ積み重なればシーンと地域への貢献力が数値化・可視化され、「何が何を理由にどれほど増加/減少したか」を客観的に把握出来るのではないでしょうか。

この仕組みを整えることは非常に大変です。一企業の利潤を追求するのではなく、全体に対して無償の貢献をするような取り組みになるはずなのでそう簡単にはいかないでしょう。でも、少しずつでもやっていかないとクラフトビール産業に科学的視点が生まれないようにも思うのです。こういう仕組みの整っていない現在の日本ではどなたかが旗を振り業界横断的に利害を調整しながら構築していかねばなりません。すぐには出来ないし相当難しいことは明らかですが、物流費や人件費の高騰、大手の参入、インポートアイテムの急激な増加などの影響も考えるとこのままではジリ貧でしょう。ブームに対しておんぶにだっこでは産業全体の持続的発展を望んでもうまくいかないのではないかと心配している今日この頃です。

「ビールを通じて地元を元気に」と声高に叫んでいるけれども、まさか雰囲気だけじゃないよねぇ・・・