第一回文献読書会を開催しました&次回以降の予告

昨日、第一回クラフトビール文献読書会を開催しました。多くの方に参加して頂き、本当に嬉しかったです。心より御礼申し上げます。

「クラフトビールって何だっけ?」ということを今一度考えるために、有名どころの文章を幾つか読みましたが、立場によって大分表現や重視していることが異なることが確認出来たのは良かったと思います。自分の持っているイメージは脇に置いて「世間のクラフト観」をちょっと引いた目線で眺めてみると新たな発見がありますね。私自身もすごく勉強になりました。

キーワードもたくさん挙がりました。重要だけれども詰め切れなかったものの一つが「OEM」です。第二回目以降にも繋がることかもしれないので昨日の議論を踏まえた上で私見を付け加えて綴っておこうと思います。

ビールでブルックリンを変えた男などをご覧頂ければ分かる通り、歴史的事実としてクラフト黎明期においてOEMでの製造は行われていました。これをもってOEMもクラフトと考えるのもアリだと思います。けれども、これはあくまでアメリカの話であり、今の日本でそういう認識になるかどうかはまた別の話という意見も当然あって良いでしょう。

私としては別の視点を取りたいと思っていて、OEMとファントムブルワーを区別しておくべきだと考えます。ファントムブルワーといえば特定の醸造所を持たない醸造家を指し、デンマークのMikkeller(ミッケラー)がかつてその形態で活動していたことは有名です。空いている設備を借りて自身のビールを醸造し、販売します。ブルワリーの建設費用を貯めるためにまずはファントムブルワーとして独立するのも一つの手でしょう。一見OEMによるオリジナルビール販売会社と似ているように見えますが、大きな違いがあると私は考えています。

OEMによるオリジナルビール販売会社は「醸造家もおらず、設備もない」のに対して、ファントムブルワーは「醸造家はいるが、設備はない」という違いがあります。これはレシピ作成や原料の選定、醸造という極めて専門性の高い作業における責任の所在に関わる問題に繋がります。ビールの最終品質に専門的な視点を持ってコミット出来るかどうかは大きな違いであると私は考えています。(サシノミ1でガージェリーを取り上げたのはそういう視点があるからです。)昨日キーワードとして挙がった「プロダクトアウト」や「物語」もそのコミットメントに関わるものでしょう。そのナラティブに真なる主体性、熱量が込められているかどうか、そしてそれを飲み手が同じように認識出来るかどうかで単なるビールではなくなるのではないか。人に対する信用、信頼が大きなウェイトを占めるように思われます。そこに私たちがクラフトと呼んで他のものと明確に区別したい心の在りようの根本があるような気がしているのです。

なお、これに連なる論点は拙著「飲んでいないクラフトビールについて堂々と語る方法」の「確かさと確からしさ」および「作られた確からしさ」で指摘していますので、ご興味ある方はご覧ください。

さて、昨日の会について主催者として反省する部分も多々ありました。今後どうするか悩んでいるところです。レイアウトや発表の形式、文量も変える必要があるかもしれません。頂いたご意見を参考にしながらちょっとずつ修正してより良いものにしていこうと思います。試行錯誤の間ご不便、ご迷惑をおかけするかもしれませんが、何卒ご容赦くださいますようお願い申し上げます。

昨日の会でご相談したように、洋書を読むかどうかは一旦置いておいて、2点検討せねばならないことがあります。

1 事前にテーマを設定し、選書したものを読んできた上で発表・議論だけに集中する会を行うべきか
2 飲み始めたばかりでとりあえず議論すると言うよりもまずはクラフトビールのことを色々と知りたい人向けの会を行うべきか

1については実際にそういうご希望があったのでやることにします。テーマ、具体的なテキストについてはご意見頂きたく存じます。また、2についても試験的に何回かやってみようと思います。私が勝手に話すだけの会で、フリーの質疑応答がたくさん出来るようにしたいと思います。「私はこんな風にクラフトビールを考えたりしているよ」、「こんな本や記事が参考になったよ」、「アレを飲んでこんなとを考えたよ」という話が中心になると思いますが、ご興味あれば是非。詳細はまた追って。

第二回目以降のスケジュールについてです。会議室の空き状況の問題で早めに押さえないとダメだということが分かりました。ということで、下記の通り以後3回分会議室を予約しました。

第二回は5月11日(土)16〜18時に開催します。この会は今回同様、事前準備無しでOKです。

第三回については6月23日(日)に開催します。12〜14時、14〜16時、16〜18時の3コマです。初めに私が勝手に話す会、次に事前準備無しの会、最後は指定図書を事前に読んで発表・議論をする会です。

第四回は7月21日(日)に開催します。12〜14時、14〜16時、16〜18時の3コマです。第三回同様、初めに私が勝手に話す会、次に事前準備無しの会、最後は指定図書を事前に読んで発表・議論をする会とします。

第三回および第四回の指定図書について私からは地ビールからクラフトビールに切り替わるタイミングと見られる2012年を概観した論文を提案したいと思います。この12年の間に何がどう変わったか、変わらなかったのかを考えてみることには大きな価値があると考えているからです。また、昨日の議論で出てきた「地域性」、「ビール祭りの効用」については観光学的視点からこんなものもあります。こちらも読むべきものの一つかと思います。

読んで皆さんと考えたいものがあればご提案下さい。皆様のご意見お待ちしております。