アメリカの現役ブルワーに聞くハイパーローカル時代の在り方③

Nov 26, 2018

さて、前回前々回はハイパーローカル化に関する現役ブルワーの回答について書きました。実はセミナーの時に2つ質問をしていました。今日はもう一つの方に触れたいと思います。

CRAFT DRINKSではこう尋ねました。

「幾つかの州でブルワリーによる消費者に対する直販が許可されるようになりましたが、そこのところはどうなのですか?」

この質問にも少々前提が必要だと思いますので、ポイントになることについて触れておきましょう。重要なポイントは「生販三層」です。以前、「生販三層」については書いていますので下記をお目通しください。

ビールの物流 生販三層

こういう商流に載せることがボリュームを出していくにあたって効率が良く、雇用を守ることでもあります。この仕組みは今でも非常に重要です。しかし、こういう流れもあります。

生販三層の崩壊?ジョージア州の場合
ブルワリー直販問題を考える

雇用や税収など色々な問題を抱えていて一筋縄ではいきませんが、こういう流れが生まれているというのは押さえておいて下さい。

さて、これらを前提に質問したわけですが、ブルワーの皆さんはどう答えたかというと「基本的に両方あって良い」という立場でした。印象的だったのは前回書いたエンゲージに絡めた視点があったことです。ハイパーローカル化の流れの中でブルワリーの近隣住民に対する直接的な接触ポイントとして直販という方法を持つことはこれから更に重要になるだろうということなのです。BAのマネージャーも「ある程度の大きさ以上になったら直販だけでは難しい」というニュアンスのことは言っていましたし、実際私自身もそう思うのですが、直販という方法の良い点・悪い点をちゃんと精査して使い分けるべきだと考えます。

生販三層だけでは顧客・飲み手とのダイレクトかつ強固な繋がり、つまり高いエンゲージメントを生み出しにくくなった。これからの時代においてはこういう認識が欠かせないものとなったのでしょう。高いエンゲージメントを実現する為の条件の一つは自ら販売できることであるとブルワリー側も考えているのだろうと推察します。これは恐らくロイヤルカスタマーと今まで以上に繋がっていこうという気持ちの表れであり、いわゆるライフタイムバリュー、顧客生涯価値という考え方がブルワリー経営にも大きく関係するに違いない。

別の視点でも考えてみたいと思います。「高いエンゲージメントを実現する為に直販が必要」であり「基本的に直販と生販三層は両方あって良い」とするならば、ブルワリーにとって全く属性の違うお客様が2種類存在するということになります。自社ショップやタップルームに来る消費者と遠方の問屋・酒販店で、それぞれ視点や常識が全く異なるわけですから、それにちゃんと丁寧に対応していくには自社のリソース配分を見直し再配置していかねばならないでしょう。直販すれば売れるとか、売れるから直販を始める、流行っているからやってみよう、などという単純な話ではなくて、「何を誰にどう伝えたいか?」というブレないコアな想いを発露させるチャネルが増えたと肯定的に捉えるべき事柄だと考えます。売り方が変わるということは伝え方が変わるということ。コミュニケーション方法が違うと言い換えても良いですね。これからの時代、ブルワリーに求められる力の一つは「何を誰にどう伝えることが最適か?」というマーケティング思考であると断言しても良いでしょう。そしてそれが「自社のみならずシーン全体にとって」であれば尚更良いと思う。

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