生販三層の崩壊?ジョージア州の場合

非常に興味深い法案についてご紹介します。

Georgia Craft Brewers and Beer Wholesalers agree on direct sales at breweries

アメリカのクラフトビールシーンは基本的にthree tier system(日本語で生販三層のこと)に則って販売されています。しかし、今回の法案はそれを覆し、醸造所での直販を許可しようという流れです。

以前、正販三層についてはいくつか書いてきたのでよろしければこちらも合わせてご覧ください。

ビールの物流 正販三層
ビールの物流 コモディティとしてのビール
“craft beer”と”クラフトビール” 雇用のこと

今までジョージア州では醸造所を訪問しても法律上ビールを買って帰ることは基本的には出来ませんでした。(アメリカは州によって法律が違うので全ての州そうではありませんが・・・)問屋を経由し、酒販店で買うのがルールだったのです。製造している現場に行ったのに買えないのはなぁ・・・と思うわけですが、醸造所見学ツアーに参加するとお土産としてボトルが数本付いてくることがよくあります。販売ではなく、お土産という名目です。何とかその法律違反にならないようにしていたわけですね。

それが今回の法案が成立すれば上限3000バレル(約340kl)まで醸造所にて販売可能となります。小規模醸造所においては販売チャネルが増えるということは有り難いことです。しかし、全面的解禁ではありませんが、アメリカの生販三層システムが一部崩れてきたと言って良いのだろうと思います。上記のリンクでもご紹介していますが、問屋・酒販店の意味合いが薄れてしまっては税収や雇用の減少を招くかもしれません。これは産業全体にとって大きな問題です。今後どういう動きを見せるのか、注視していきたいと思います。

ところで、日本のクラフトブルワリーと比較してみると非常に面白いことに気が付きます。アメリカは生販三層に始まって今それを破ろうとしています。日本は逆に飲食店や酒販店への直販から始まり、少しずつ問屋経由のものが見受けられるようになりました。問屋プロデュースのクラフトビールもありますしね。つまり、私には流れが全く逆に見えるのです。どちらが正解だと言う話でもありませんし、国土の広さも人口も、そして消費量も違います。それぞれの環境で適切な形になってくるのだろうと思います。今は過渡期ですから、まだ判断するのは早い気がします。

さて、「クラフトビールを文化に」というようなことを聞くにつけ、買うのが簡単でないとそれは達成できないだろうと感じます。当たり前のように身近な存在にならないといけない。とすると、具体的には生販三層で津々浦々の酒販店やスーパー、コンビニの棚に流通していかねばならないでしょう。関係各所で色々な思惑はあるのでしょうが、「美味しく醸されたクラフトビールが適切に流通し、管理され飲み手に届く体制」を構築していくことが「文化」にする為の一つの条件ではなかろうかと思います。とはいえ、既存の商流・物流はクラフトビールに不向きな点も多いので悩みますが・・・

鶏と卵のような話なのですが、「棚にあるから売れるのか」、それとも「売れるから棚に置くのか」。ボリュームが解決することは少なくないなぁと感じる今日この頃なのです。