アメリカの現役ブルワーに聞くハイパーローカル時代の在り方②
前回ハイパーローカルという概念をCRAFT DRINKSなりに解釈してご説明しました。まだ読んでいない方は前回を読んでから今日の文章を読んで下さい。
さて、ACBEのセミナーでCRAFT DRINKSは現役ブルワーの方々にこう質問しました。
「ブルワリーが7000軒を超え、これから更にハイパーローカル化が進むと思いますが今後差別化するにはどうしたら良いと思われますか?」
その回答として全員が共通して語っていたのは、、、
品質
とにもかくにもこれなのです。要するに、ビールがちゃんと美味しいことがまず大事であると言っているのですね。SNSなどを使って派手なアピールをすることも出来ますが、品質の高いものを作れないブルワリーがそんなことをしたところで表面的で意味がありません。一過性の人気を得ても継続性は無いのです。ブルワリーに対する信用は「品質」によって作られるのでしょう。
その上で必要なものとして、各ブルワーが挙げたものがこちらです。
experience(そこでしか出来ない顧客体験)
engagement(つながりの強さ)
community activity(コミュニティに対する貢献活動)
innovation(より高品質なものを生み出すためのたゆまぬ挑戦)
sustainability(事業の持続可能性)
あぁ、なるほど。どれも納得のものばかりです。ブルワーの皆さんは一発逆転など狙っておらず、競合と切磋琢磨しながら日々コツコツ頑張っていらっしゃるのでした。
ハイパーローカル化することで極小単位のマーケットにライバルが増えるわけですが、ライバルが新規参入してくるのをなんとかして阻みたいというニュアンスは無く、寧ろwelcomeという雰囲気だったのが興味深い。プレーヤーが新規参入できること、そしてプレーヤーが増えていくことでシーンの多様性が担保されるのでしょうね。極めて公正な世界です。しかし、裏返してみれば淘汰されるブルワリーが生まれるのもまた必然で、関係性の中で生きていく為に皆さん緊張感を持って日々醸造に励んでいらっしゃるのでしょう。何か特別なものがあるのかもしれないと少し期待していたのですが、ここで示されたハイパーローカル時代のブルワリーの在り方は何も特別なものではありませんでした。そのことに驚き、また考えさせられるのです。
クラフトビールシーンは品質が低ければすぐに淘汰される世界ですが、逆に品質が高ければちゃんと評価される世界でもあります。参入障壁が低いけれど多産多死で情け容赦ない。基本的にそれを良しとしている文化や精神構造というのもまた非常に興味深いわけです。その御蔭で消費者は美味しいものを楽しむことが出来るわけで一概には否定は出来ないけれども。これから日本もそんなアグレッシブ過ぎるほどの世界になっていくのだろうか?いや、見えていないだけですでにそうなのかもしれない。