成功しているビアバーがやっている5つのこと③メニュー管理

成功しているビアバーがやっている5つのことと題して、アメリカの事例を元に以下の5点について考えていきます。前回書いた通り、これはアメリカの話なので完全に日本と同じというわけでもないかもしれませんが、参考になると思います。良い部分は取り入れて、日本アレンジを加えれば良いでしょう。

第三回目の今日は2. Up-To-Date Beer Menu(メニュー管理)について。craftbeer.comの記事の該当部分をまず見ていきます。

2. Up-To-Date Beer Menu
When arriving at an establishment proudly touting a large selection of craft beer, it’s disappointing when your top three choices aren’t available. It is OK for an establishment to sometimes run out of a beer—in fact, it’s often expected, especially of rarer brews. But if a bar is going to go through the expense of having colorful, laminated menus, the beers on the menu should regularly be in stock.
自信をもってオススメできるクラフトビアメニューが出来ても、お客様が飲みたい銘柄トップ3が切れていたらがっかりしてしまう。時々売り切れということもあるだろうし、実際限定品であれば仕方ないかもしれない。しかし、ラミネートをかけたグランドメニューにしたのなら常時在庫しておくべきでしょう。

A simple change could spare patrons a lot of crushed hopes. Lately I’ve noticed more and more bars putting their craft beer menu on a chalkboard, which is a clever and inexpensive option for a menu that’s easy to update. Some bars opt to display the current tap list on digital screens, which is the ultimate option as selection can be instantly updated.
黒板にメニューが書いてあったりするのを最近よく見かけます。日々メニューを直すのが簡単だし費用もかからず、とても良い方法です。デジタルスクリーンに提供中の銘柄を表示するお店もありますね。あれはすぐに直せる一番良いものです。

In addition to keeping lists up to date in-house, keeping an updated tap list online is very helpful to prospective patrons. That way, customers know what to expect before they even walk in the door.
オンライン上でタップリストを管理するのはお客様にとっても良い。お店を訪れる前に分かるのだから。

非常に大事なお話ですね。自分自身の経験からしても「あぁ、そうだよなぁ」と思います。1つずつポイントを拾っていきましょう。

売り切れは「販売機会ロス」であり、極力無い方が良いのは自明です。在庫が絶対に切れない「お店の看板になるド定番」を作ることは非常に大変で頭を悩ましますが、それが確立できれば勝ちかもしれません。レストランで言えば、スペシャリテというものに相当するでしょう。「あそこに行けばいつも美味しいアレがある!」という状況です。これは大きな来店動機になることは間違いありません。ド定番は本当に、絶対に、大事です。

とはいえ。

常時在庫の切れない、品質も安定したお気に入りのド定番商品が見つかりません・・・という方もいらっしゃるかもしれません。現在のシーンは国産、輸入を問わず常に何かしらの限定品があり、醸造所側も限定品をたくさんリリースしていますね。「定番無し、常時売り切れ御免」で運営していく方法もあるでしょう。実際、常時入れ替え制になっているお店がほとんどだと思います。(長期保存が可能だと思えば一度にどーんと確保しておくのも一つの方法です。いつまでも あると思うな うまい酒でそんなことも以前書きました。)

そうであれば、書き換えにくいメニューを作る必要はないわけです。常に今どういう状況かを端的に表すものがないとお客様には分からない。引用では黒板とデジタルスクリーンを紹介していますが、私はA4一枚の「差込みメニュー」でもいいと思います。もっと言えば、居酒屋さんの壁にぺたぺた貼ってある「今日の仕入れ一覧」や「日替わりの短冊メニュー」のような形でも構わないでしょう。お客様に伝わる形式であれば何でもOKだと思います。もちろん、「あれ、何ですか?」と尋ねられた時に答えられる準備だけしっかりしてあれば。(この部分は前回の知識のあるスタッフ編にも繋がる話ですね。)

最後の段落で言っている「オンライン上でタップリストを管理するのはお客様にとっても良い。お店を訪れる前に分かるのだから。」の部分は具体的にどうしましょうか?アメリカであればUntappdやTaphunterのようなスマートフォンアプリで行うかも知れませんが、日本ではまだまだ普及していません。現実的にはtwitterやfacebook、instagramでアカウントを作成して日々のタップリストを配信するのも一つの手でしょう。有料、無料を問わずブログを活用するのも良いと思います。とにかくweb上に何らかの発信をすることが大事です。思い立ったが吉日です、まだ何も行っていない方は今すぐアカウントを取りましょう!そして、リアルタイムの運用が出来ると情報発信としては最高です。

引用にはありませんが、一点だけ。外食産業では「メニューはスタッフ一人分の働きをする」などと言われます。上手に設計されたメニューは実際に良い働きをします。しかし、メニューは所詮メニューで、それ自体に感動してまた来ようとは思いません。きっと大事なのは「メニューをきっかけに始まる人的コミュニケーション」です。醸造所や輸入元の公式案内をコピペしても全然面白くないし、IBUやらスタイルを書かれても分かりません、普通は。そのお店らしく噛み砕いた表現こそが「らしさ」につながり、コミュニケーション強度を上げる施策になるのだと思います。そのお店の解釈やスタンスが透けて見えるのがメニューなのかもしれないなぁと思う今日このごろです。