いつまでも あると思うな うまい酒

ちょっと思い出話でも。
私は社会に出てからずっとお酒に携わっています。最初はウイスキーやブランデー、ラムなどのハードリカーを中心に置いてあるお店におり、同業の諸先輩方に身分不相応なくらい良いものをたくさん飲ませて頂きました。本当に良い経験をさせて頂き、感謝しかありません。

ウイスキーに目覚めたあの一杯のことは忘れもしません。スコットランドのシングルモルトウイスキー「マッカラン18年 1984オフィシャルボトル」。抜群のクオリティで、目からうろこがポロポロ落ちました。「あぁ、シェリー樽の風味というのはこれか。うまいなぁ。ウイスキーのロールスロイスとは言ったものだ」としみじみ思ったのでした。今流通しているものとはラベルが違い、現在市場では旧瓶とか、旧ラベルと言われています。シェリー樽の枯渇が叫ばれて久しく、昔のマッカランのオフィシャルボトルはプレミアがついて価格がうなぎのぼり。ヤフオクあたりで試しに検索してみると、目玉が飛び出るくらい高くなっています。たかだか十数年前の話なのですが、隔世の感を禁じえません。あの当時、マッカラン18年は一本一万円でお釣りが来たと記憶しています。いっぱい買っておけばよかったなぁ。

師匠に言われた言葉を思い出します。「いつまでも あると思うな うまい酒」。これです。本当にそうなのです。ウイスキーに限らず、ワインもビールも全く同じです。テイスティングして「これだ!」と思ったものは絶対に買いです。次に欲しいと思った時には大抵手に入りません。無くなってから「買っておけばよかった・・・」と毎回後悔するわけです。その点、プロはすごいですね。ここぞという時に、倍プッシュ、三倍プッシュしてガツンと仕入れておきます。やはり目利きと相場感がモノを言う世界。

ビールは設備投資をしてタンクを増やせば理論上たくさん作れるのですが、原料が農産物ですから仕上がりは毎回全く同じにはなりません。限定品も多数リリースされていて、手に入る瞬間は限られています。美味しいものは常に必ずあるのですが、全てが美味しいわけではないので「飲めるうちに飲む」、そして「買えるうちに買う」。これが絶対にセオリーです。冷蔵庫にビールがいっぱい詰まっていると安心するじゃないですか(笑)

ただし、二点お願いがあります。まずは「他の誰かの意見に従わず、自分の意志で購入してください」。ビール評価サイトのスコアなどは盲信せず、自分の好みや嗜好に合わせて適正量を買ってください。誰かの意見などは意味がありません。飲むのはご自身ですから。もう一点は「投機目的で買い集めないでください」。買い占めてやろう、とか、転売してやろう、なんていうのは宜しくないです。自分で飲む分だけにしないとビールをこよなく愛する同志たちが飲めなくなってしまいます。

とはいえ。理想なのは「びっくりするくらい美味しいものが当たり前のように身近にあって、いつでも飲めること」です。レアだからどうのこうのということが無い世界、当たり前のレベルが高い世の中になってほしいと思います。無くなる前に買っておこうなどという発想自体がナンセンスになるように、CRAFTDRINKSは最高品質のスタンダード品を徹底的に追求していきたいと考えています。