ペアリングを拒否するビールの話

突然ですが、質問です。ビールを飲む時に食べ合わせは意識しますか?

一人の飲み手として私は基本的に考えません。お酒それ自体の絶対値を考えることが多く、食べ合わせた時のことはそれほど主眼にないのです。もちろん味わいから想起されるものもありますし、ピンときて何かを合わせることもあります。とはいえ、私の中ではビールを飲む時に必ずするわけではなく、あくまでも例外的なことです。

実際webや雑誌ではペアリング紹介の記事も多く、色んな場所でよく見かけます。もちろんペアリングをして美味しいものはきっとあるでしょう。そういう視点でビールを捉えることも一つの方法だと思うのです。ペアリングが可能な、ある種隙間や余白のようなものがあると楽しみ方の幅が広がりそうな気もします。日本で古くから続く晩酌文化に寄り添う形に近くなるのかもしれません。

しかしながら、今回敢えて申し上げたいのです。昨今のトレンドを見ていると、どうしてもペアリングという発想にならないものが増えている気がしてならないのです。

ペイストリースタウトやフルーツゴーゼをはじめ、最先端というか、カルト的人気を誇るカッティングエッジなものはそもそもペアリング済みのような状態に仕上げていたりもします。液体自体が最早メイプルシロップパンケーキだったり、シナモンチョコケーキだったり。他にもミックスベリースムージーだったりするので、一口飲んで「これ以上どうしろと、、、ペアリングなんて無理じゃね?」と結論付けられるものも少なくないのです。お酒の方からペアリングを拒否していると思われるものを見かける機会が大分増えたと感じます。

何かをつまみながら飲むというよりも、単品でどれだけ美味しいか、面白いか。もっと言えば、液体に込められた意図や主張がダイレクトにどれほど感じられるか。外部から何かを足そうなんてことはこれっぽっちも思っていない。これらは恐らくお酒単体でどれだけ複雑なことが出来るのかを追求しているタイプのビールです。「つまみ?ペアリング?はぁ??すっこんでろ!」と液体自体が主張しているようにも感じたり。

The Veil BrewingのNever Never Gonnagetit Gonnagetitというビールを飲んだことがあります。ラズベリー、ボイセンベリー、ブラックベリーをこれでもかと入れたものです。まぁ、すごいのですよ、これが。一応ビールというカテゴリーに入るのでしょうが、色も粘度もすごいし、もはやスムージーです。

 

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ベリーの風味を活かすという意図でたとえばレアチーズケーキを合わせるのもオシャレだし、きっと美味しいよなぁと思います。その一方で、食べ物を追加することでこのお酒のポテンシャルを発揮させるとはどうにも思えなかったのです。

お酒と私が二人だけで会話していて、なんとなくいい雰囲気になってきたところに突然邪魔者が割って入ってくるような・・・いや、違うか。例えが下手かもしれない。まぁ、何にせよ、お酒と食べ物を合わせるペアリングを考える時何をどう合わせるかを考えがちだけれども、そもそもペアリングが必要なのか?という考え方もあって良いのではないかと思うのです。異常にテンションの高いお酒が増えてきたからこそ、そういう話をいわゆる中の人から発信しても良い気がします。