税率変更と発泡酒免許の話

ビールの税金が安くなりそうですが、値上げするブルワリーがあってもいいと思うのですという投稿でビール類の税率変更について触れました。そこでここではビール免許のブルワリーに限った話です。と書きましたが、そのあたりに込み入った部分があるので少し書きたいと思います。裏返せば、「発泡酒免許の醸造所のクラフトビールは値上がりするの?」という部分です。

結論から言うと、「ビールと同額払っている発泡酒がたくさんある」、そして「情報が少ないのでまだ判断できない」ということなのです。

今回議論されている税率変更は「ビールは減額、他2つは増額」です。まずここが前提なので押さえておきましょう。

次に、日本における酒造免許について。クラフトビール関連でいうと、「ビール免許」と「発泡酒免許」の2つに分かれます。前者は副原料なし・麦芽100%のビールを製造でき、年間最低生産量は60KL。後者は副原料あり、もしくは麦芽使用比率67%未満の発泡酒を製造し、年間最低生産量は6KL。近年小規模醸造所やブルーパブが増えていて、免許取得は発泡酒が多いです。初めから60KL作って販売するのは相当大変ですからね。小さく産んで大きく育てる、という感じでしょうか。

発泡酒免許を有する醸造所は発泡酒を製造しているわけですが、大手の作っている発泡酒とは明確に違う部分があります。税率を定める法律を見ると、こう書いてあります。酒税法第二十三条から抜粋します。

(税率)
第二十三条  酒税の税率は、酒類の種類に応じ、一キロリットルにつき、次に定める金額とする。
一  発泡性酒類 二十二万円
二  醸造酒類 十四万円
三  蒸留酒類 二十万円(アルコール分が二十一度以上のものにあつては、二十万円にアルコール分が二十度を超える一度ごとに一万円を加えた金額)
四  混成酒類 二十二万円(アルコール分が二十一度以上のものにあつては、二十二万円にアルコール分が二十度を超える一度ごとに一万千円を加えた金額)
2  発泡性酒類のうち次の各号に掲げるものに係る酒税の税率は、前項の規定にかかわらず、一キロリットルにつき、当該各号に定める金額とする。
一  発泡酒(原料中麦芽の重量が水以外の原料の重量の百分の五十未満二十五以上のものでアルコール分が十度未満のものに限る。) 十七万八千百二十五円
二  発泡酒(原料中麦芽の重量が水以外の原料の重量の百分の二十五未満のものでアルコール分が十度未満のものに限る。) 十三万四千二百五十円
三  その他の発泡性酒類(ホップ又は財務省令で定める苦味料を原料の一部とした酒類で次に掲げるもの以外のものを除く。) 八万円
イ 糖類、ホップ、水及び政令で定める物品を原料として発酵させたもの(エキス分が二度以上のものに限る。)
ロ 発泡酒(政令で定めるものに限る。)にスピリッツ(政令で定めるものに限る。)を加えたもの(エキス分が二度以上のものに限る。)

注目すべきは2の一。「発泡酒(原料中麦芽の重量が水以外の原料の重量の百分の五十未満二十五以上のものでアルコール分が十度未満のものに限る。) 十七万八千百二十五円」とあります。麦芽の重量が50%未満だと1klあたり178125円かかると書いてあります。大手の作る発泡酒は麦芽の少ない上記のようなものです。注意したいのは、実は50%以上だったらビールと同額の1KL あたり22万円かかるという点。発泡酒免許を有する多くの醸造所は麦芽比率の高いリッチなお酒を作っているので「名目上”発泡酒”だけれど、税金はビールと同じもの」を作っているのです。発泡酒免許の醸造所だからといって安い税率とは限らないというわけです。変更されたらビールと同額になるので名目上発泡酒であっても酒税は安くなるのかもしれません。

さて、上記の部分についてどのようになるか詳しい情報がまだ全然出ていません。与党から税率変更の方針は出されましたが、発泡酒比率の高い大手からの反発も予想されますから一筋縄にはいかないでしょう。酒税の半分を占めるビール類なので税収に直結する大事な話です。慎重に議論され、結論が出されるでしょうが、基本的にシェアの小さなクラフトビール側のことは考慮されていないと考えるべきです。国と大手との間で決まったルールが小規模醸造所にも適応されるという話で、その結果を待つしかない状況だと思われます。