ワンウェイケグを導入するのは最早必然ではなく、現実になったという話

ブルワリーを始めとするクラフトビール関連事業者の皆様は肌感覚でお気づきかと思いますが、ワンウェイケグの導入待ったなし、という状況になっています。私なりに把握している範囲で一旦状況を整理しておきたいと思います。どう考えてもワンウェイケグが有利な状況に傾いてきたように思うのです。

2017年にワンウェイケグは最早必然ではなかろうかという話という話を書きました。その文章では人口減少による需要の頭打ちを見据えて海外へ販路を求めていくことが必然であるならば容器はワンウェイケグが最適であるということを述べました。

海外輸出に関してはある程度大きなブルワリーが関心を持つものだと思いますが、2017年以降、特にここ2、3年はものすごい勢いで新規開業が増えています。多くは小規模で、発泡酒免許のブルーパブも相当数あると推察します。ごく少数でブルワリーを運営していかねばなりません。マンパワーで無理すればOKというある種ブラックな体質が散見されるマイクロブルワリー界隈においてはその改善は急務となっていると思われます。BREWDOGとDE MOLENが急成長を遂げた理由で導入に関するメリットをたくさん挙げましたが、導入による作業負担軽減や省人化は労働環境改善にも繋がることでしょう。

2022年の状況証拠から考えると、クラフトビールの値上げは待ったなし?で指摘した原料価格の高騰はもとより、為替の影響も大きく原料や資材の価格が目に見えて上がりました。パブの仕入れ価格が上がれば当然店頭での売価も上がります。当初から高級品であったクラフトビールは可処分所得の伸び悩みもあって更に高級品になりつつあります。値上げせねば利益が確保出来ないけれども、値上げすると潜在的に飲み手が減るという難しい状況です。

それに追い打ちをかけるのがエンドユーザーである飲食店の人手不足と配送費の値上げです。ブルワリーのメリットだけでなく、飲食店側にもワンウェイケグを使うメリットが生まれてきていると思われます。

まず前者の人手不足についてですが、帝国データバンクによると2024年2月発表の調査によると非正社員の人手不足割合第一位が飲食店。アルバイトで回しているお店も多いので、これはシャレにならない状況です。そのため時給も上昇傾向ですが、それでも人が集まらずシフト組みに苦労しているお店は多いようです。現場での作業量軽減は重要な問題になっています。

後者の配送費の値上げも結構しんどくなってきました。この4月に大手運送会社は送料の値上げを行いました。また、通常運賃に加えてクール代も上がっていて、気が付けば15Lケグを東北から東京にクール便で送ると正規料金で3000円ほどになりました。北海道からとなればもっとです。古くからの業務用契約があるブルワリーからの往路はもっと安く出していますが、飲食店からの復路はそうもいきません。返送は常温で良いとは言え、結構な価格になります。往復両方で値上げが効いてくるわけです。

業務用容器なのでここで単価を明らかにすることは出来ないのですが、すでにワンウェイケグを利用した方が安い地域も出てきています。私は以前ブルワリーの作業を減らし、品質向上のための仕事に時間が充てられるようにするべくワンウェイケグ導入をお勧めしてきました。今もその考えは基本的に変わっていないのですが、サプライ側だけでなく実際に使用するエンドユーザー、つまり飲食店側にもワンウェイケグのメリットが増えてきたように感じられます。

ブルワリーの方は是非お取引をしている飲食店の方にワンウェイケグの導入をどう思うか聞いてみてください。その時、廃棄にかかる手数料についても確認しておくと良いと思います。私が調査している中で自治体や契約している廃棄物処理業者によって処分費用が異なります。ワンウェイケグの廃棄処理に復路の送料以上かかる場合もあるようなのです。それでは意味がありませんので、広くヒアリングすることをオススメします。