クラフト大手の次の一手いろいろ

Aug 30, 2019

意味深なタイトルを付けましたが、最近クラフト大手の動向が興味深いのです。次のフェーズに向けて動いているなぁと思わされます。

まず事例をご紹介しましょう。全米14位の大きさを誇るブルワリー、Foundersはすでにスペインのビール会社Mahou San Miguel(マオウ サン ミゲル)に一部株式を所有されていましたが、90%を取得するようになるとのこと。

Spanish brewer Mahou to acquire Founders Brewing

また、今年5月の話ですが、全米2位のBoston Beer coと13位のDogfish Headもくっつきました。

Boston Beer Co. and Dogfish Head Will Merge to Form a Craft Beer Giant

メガブルワリーによるクラフトブルワリーの買収については枚挙に暇がないのですが、近年独立系のクラフト大手同士の提携も聞くようになりました。Oscar BluesとCigar cityもそういう関係です。

今回のFoundersの場合、ほぼ買収される形になるわけですが、現経営陣はそのまま残るとされています。その上でMahouとのつながりを強化するメリットをこう説明しています。

Mahou’s larger ownership stake in the company will help Founders Brewing think more strategically in the future, especially from a brand-building perspective. While Founders has been successful at growing brands such as All Day IPA and Solid Gold, according to Stevens, he thinks the company still has plenty of running room to gain share with those products and explore other areas of the market.
MahouはFounders社の所有権をより大きく取得し、特にブランド構築の観点からFoudersが将来これまで以上に戦略的に考えるのを助けます。 (Foundersの創設者である)Stevensによると、FoundersはAll Day IPAやSolid Goldなどのブランドの成長において成功しているが、同社はこれらの製品のシェアを更に獲得し、市場の他の分野を探求する余地がまだ十分にあると考えている。

既に全米にビールを供給しているクラフト大手ですが、更なる成長を望むと自前で伸ばすよりも提携した方が効果的と考えたのであろうと推察されます。

市場の環境として緩やかではあるもののシーン全体は伸びています。けれども、BAのプレスリリースにもあるようにあと数年でブルワリーは1万軒に達します。一軒あたりの販売量が少なくなって来るのは容易に想像されることですし、すでにクラフト大手の伸びは以前に比べて大分弱ってきています。New BelgiumやSierra Nevadaなどの老舗のクラフト大手は特にその傾向が強い。故に、ビールで攻めるのであれば強いサプライチェーンを持つところと協調し、プロモーションを強化していくのは妥当な判断だと思われます。

全米1万軒。そんな状況が現実味を帯びてきたのを受けてクラフト大手の一挙手一投足に注目が集まるわけですが、興味深い発表が2つ出てきました。

One of Colorado’s Top Craft Breweries Is Getting Into Wine
PBR expands to coffee, seltzer, whiskey: ‘We aren’t sitting still’

前者はコロラド州のOdell(オデル)がワイン製造を始めるという記事で、後者はPBR(Pabst Blue Ribbon の略)のブランドでビール以外の酒類を発売するという記事です。Odellがどこまで大きくやるのかはまだ分かりませんが、ビール醸造とのシナジーが内製できるワインに進出というのは納得。また、PBRはBAの基準ではクラフトではありませんが、アメリカでは非常にポピュラーな超有名ブランド。著名なPBRブランドを引っさげて隣接領域も取りに行こうということでしょう。どちらの会社も無茶苦茶大きなところではありますが、更なる成長へのテコ入れとして「ビール以外」にも進出するのだろうと私は思いました。

このような展開は決して新しいものではありません。たとえばBoston Beer coはビールのSamuel Adams以外にハードサイダーのAngry Orchard、ハードアイスティーのTwisted Teaなどのブランドを持っています。Samuel Adamsが有名ではありますが、ブルワリーというよりももはや総合酒類メーカーと呼ぶべき存在です。Craft Brewerの定義変更にも関わることでもあるので、興味のある方はこちらも合わせてご覧ください。幾つもの領域に自社製品ポートフォリオを広げたからこそ超巨大企業になり、それを維持出来ているのです。ビール醸造で会社を興し大きくなってきた老舗のブルワリーもたくさんありますが、シーンの拡大と共に競合も増えていてクラフト大手の規模感からすると経営的にビールの一本足打法ではなかなか伸ばしきれないのが現状であろうと考えられます。

永久に1次関数的右肩上がりということは無く、どうしても経営的に踊り場が来るのは世の常です。企業の成長、規模を求めた場合どこかで大きな経営判断を求められるタイミングも来ることでしょう。あくまでもビールの自社製造・自社販売にこだわるのもそれはそれでかっこいい姿勢ではありますが、他所のブルワリーとの提携という手もあるし、隣接領域への進出もまた1つの方法です。幾つかのクラフト大手が徐々にこういう方向を模索しているということは示唆的だと感じます。

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