消費税増税後、ビールはどうなるのだろう?

タイトルの通りなのですが、ぼんやりと考えていたことを書いてみようかと思います。ちなみに、食品はイートインだと10%で持ち帰りだと8%となりますが、お酒は条件にかかわらず全て一律10%です。ここはまず前提として押さえておきましょう。

さて、ビール酒造組合がこういう調査結果を昨年秋に出していました。

消費税10%に上がれば3人に1人が「ビール離れ」/ビール酒造組合調査

気になる部分を引用しておきましょう。

2019年10月に消費税が10%に上がった際に「家計で節約しようと思うもの」は「外食費」(40%)、「食費」(37%)、「飲酒」(22%)以下、水道光熱費、日用品と続き、「飲食費」が節約項目のトップ3を占めた。

「ビールの飲酒行動はどうなるか」との問いには「現在と変わらない」が62%で6割超となった。一方、「減る」(28%)、「飲むのをやめる」(3%)、「他の酒類に変える」(2%)と、“ビール離れ”の意向を示す人(33%)も3人に1人と少なくない。

同じく「新ジャンルの飲酒行動はどうなるか」との問いには「現在と変わらない」が67%と6割超で「ビール」よりも高い。一方で、「減る」(20%)、「飲むのをやめる」(4%)、「他の酒類に変える」(3%)など、“新ジャンル離れ”の意向を示す人は4人に1人にのぼった。

節約の優先順位が高いのはやはり外食、食費そしてお酒。ビールはずっと減少傾向なので更に拍車がかかることでしょう。となると、調査したのがナショナルブランドの皆さんが作った組合なので比較的安価な発泡酒や新ジャンルへの移行が興味の的になるのでしょう。大手各社はすでにそちらのテコ入れを始めています。たとえばこんな感じです。

「サッポロ 麦とホップ」フルリニューアル、“ビールに近い”を徹底的に強調/サッポロビール

消費税率8%の現在、税前250円のものが現在税込み270円で販売されていますが、こちらが増税後275円になります。5円の差で33%の人がビール離れしてしまうかもしれない。「若者の「酒離れ」は本当に起きているのか そもそも日本人全体の飲酒率がこの30年で減少傾向」という調査結果もありますし、まぁ、それだけ世間のアルコール離れは強くなっているのは間違いないのでしょう。

上に挙げたビール酒造組合の調査は一年前のものですが、つい先日秋冬向けのキャンペーンに関する日経新聞の記事を読みました。その中に気になる文言があったのです。(グラフもあるのでこちらも合わせて御覧ください。)

約6割の方が消費税増税後に「外食・飲み会費」を節約したいと回答。うち約8割が自宅での食事を充実させたい、さらにそのうち9割以上がプレミアムビールを飲みたいと回答しています。

どうせ飲むなら安い方が良いと考え、家飲みをしようと考える人が増えるということですね。外で飲むより安いから家ではプチ贅沢としてプレミアムビール、ということなのでしょう。

冒頭でご紹介した記事によると、30円値下がりしたら「増える」が3割になるそうで。なんだかんだで飲みたいからリッチな味も大事だけれどとにかく安い方が良いということか・・・。外食の回数を減らし、コンビニ・スーパーで買って家飲みをする人が増えそうだというのは私も同意です。安いからコモディティになったのか、コモディティになったから安くなったのかは分かりませんが、増税による元々安い商品の実質的な値上げはそれなりに影響を及ぼすことでしょう。

あれ?ビールの税金は下がるんじゃなかったっけ?

・・・と思われた方もいらっしゃるでしょう。ビールおよび発泡酒の酒税は2026年までに段階的に引き下げられます。また第三のビールは逆に上がり、最終的にビール類は一本化されます。こちらの記事の図を見て頂くと分かりやすいと思います。一回目の引き下げが今年ではなくて来年の2020年10月なのです。今年は消費税だけが上がる、ということです。うーん、なんだかなぁ。

業務用から家庭用へ少しずつシフトしそうだというのは既に肌で感じるところでもあります。日々のルーティンとして、スーパーやコンビニ、地方に行った時は地元の酒屋などを回って棚に並ぶ商品の銘柄と価格を確認するようにしています。私の見ている範囲だと、全国的に発泡酒、新ジャンル、そしてストロング系も含めたRTD(いわゆる缶チューハイのタイプ)が全盛でものすごい広さの棚を押さえています。特に存在感が強いのは大手スーパーのPB缶チューハイ。350ml缶で特売だと100円切ります。缶コーヒーより安い。お酒のジャンルというよりも絶対的に低価格の商品への移行が感じられますし、その移行先でもメーカー品と小売PBで熾烈な競争が繰り広げられることでしょう。

上記で挙げたものが増えた分、追いやられてしまったのはプレミアムビールとインポートビール、そしてクラフトビールです。全国の実売データを入手するのは難しいのではっきりしたことは申し上げられないのですが、300円を切る価格で出回っていた国産クラフトと輸入もののビールは本当に減っているように見えます。この価格帯がしんどいとしたら、500円を超えるブルワリーのボトルや缶はどうなってしまうのだろう?色々考えてしまうのです。