ベルギービール、世界遺産への登録申請中
Le Soirの報じたところによると、ベルギーは国としてユネスコの世界遺産に「ベルギーのビールおよびその文化」を登録しようとしているとのこと。11月28日より開催されるユネスコの会議にて検討される予定だそうです。選考に当たっての資料には「トラピスト修道院を含め、様々なコミュニティーでおよそ1500種類以上ビールが作られている点」も挙げられています。
ブリュッセルのグランプラスなど、既に多数のものが世界遺産に登録されていますが、日本の「和食(washoku)」が登録されたように、無形の食文化である「ビールとその文化」が登録されるかもしれません。非常に楽しみです。
ベルギーの世界遺産にご興味のある方はこちらがよくまとまっているので御覧ください。→ ベルギーのユネスコ世界遺産
さて、ちょっと考えてみたいことがあります。ベルギービールが世界遺産に登録されたらますます認知が上がることでしょう。「ベルギーに観光がてらビールを飲みに行く人」も増えるのではないでしょうか。資本主義社会における商品として流通しているビールですから、国内消費だけでなく諸外国からの引き合いも増加することは必至です。クラフトビールの世界的流行と共にすでにかなりブレイクしているベルギービールですが、これが更に加速するというわけです。
以前、トラピストビールで有名なオルヴァルについて少し書きました。今時、出家する若者がいるのか?というタイトルでしたが、オルヴァル修道院でも増産はしてきましたが人員の問題や需要の急増で最早対応しきれないほどになってしまっています。
実際、ここ数年ベルギービールの輸出はコンスタントに全生産量の60%以上。EU以外の外国への輸出が急激に伸びています。昨年ベルギーに行って作り手に話を直接聞きましたが、醸造所のサイズに関係なくどこも今は生産に忙しいそうです。この部分の説明はだいぶ長くなるのでThe Brewers of Europeという団体が毎年データを色々出していますから、そちらをご覧になってください。結構面白い数字が見られます。→ The Brewers of Europeのpublication
ビール醸造は設備産業的面が大きく、タンクの大きさと数で作れる量が決まってしまいます。需要に応じるだけの設備投資が出来ているところはいいですが、そうでない醸造所も多数あるでしょう。また、ランビックのようにすぐには増産出来ないお酒もあります。ユネスコの世界遺産に登録されることになれば更に世界中においしいベルギーのビールが普及するでしょう。しかし、今でも入手が難しかったものは輪をかけてそうなるのではないかと思います。ここはトレードオフで、如何ともしがたい。悩ましい。